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ミャンマーで開業が相次ぐエレファントキャンプ。そこには象の失業問題が

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴3年)

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アジア・オセアニア|ミャンマー|2018年04月10日

 象に乗って森を散歩する「エレファントキャンプ」と呼ばれる施設が、この2~3年、ミャンマーで急激に数を増やしている。その背景には、象の失業問題があった。

エーヤワディ管区のエレファントキャンプ

エーヤワディ管区のエレファントキャンプ

政府系機関が2016年から象観光に進出

 地元英字紙「ザ・グローバルライト・オブ・ミャンマー」(2018年2月24日付)は、2018年の元日(西暦の4月17日にあたる)までに、バガンやピンウールインといった観光地の近くに、計3軒の新しいエレファントキャンプがオープンすると報じている。
 この事業に取り組んでいるのは、天然資源・環境保護省が管轄する政府系機関「ミャンマー・ティンバー・エンタープライズ」。2016年から始めたエレファントキャンプの開設は、すでにミャンマー全土で16軒を数えている。新たに開業するエレファントキャンプの入場料はミャンマー人1,000チャット、外国人2,000チャット。象に乗るにはさらにミャンマー人は3,000チャット、外国人は2万チャットの追加料金が必要となる。

国内旅行ブームに沸くミャンマー

孤児象への授乳体験が人気の「ウィンガボー・エレファントキャンプ」

孤児象への授乳体験が人気の「ウィンガボー・エレファントキャンプ」

 象に乗るアトラクションについては、2016年あたりから隣国タイを中心に動物虐待にあたるのではないかと議論されるようになっているにもかかわらず、ミャンマーではむしろここ数年で劇的に増えている。これには2つの理由がある。ひとつは国内旅行ブーム。民主化が進み経済状態が向上するにつれ、ミャンマーの人々が娯楽にお金を使い出したのだ。
 ミャンマーは祝日が多い国で、土日とあわせて連休になることも少なくない。2018年の場合、3連休が5回、4連休が1回、1日有休をとれば3連休以上になる休みが7回もある。これらに加え、水かけ祭りの期間は5連休。曜日の並びによっては9連休になる年もある。こうした休みの多さもあり、新しい訪問地の開拓が求められている。

世界で3番目に森林破壊が進む国

観光地で観光客と写真を撮るなどして餌代を稼ぐ「失業象」

観光地で観光客と写真を撮るなどして餌代を稼ぐ「失業象」

 もうひとつは象の失業問題だ。
 2015年に発表された国連食糧農業機関(FAO)の調査によると、ミャンマーは2010年から2015年にかけて森林破壊が進んだワースト国の3番目にランクイン。国土に占める森林面積が、2010年の47%から5年で43%まで減少している。
 これを受けて、2016年に誕生したアウン・サン・スー・チー氏率いる新政権では、森林地帯を多く擁するラカイン州やカチン州、シャン州、バゴー地方で1年間にわたり木材の伐採を禁止。バゴー地方についてはその後、違法伐採が横行しているとして伐採禁止期間が2027年まで延長された。
 ミャンマーでは、伐採した木材を山の中で運ぶのは象の役目。伐採禁止に伴って失業した象の受け皿として政府が進めたのがエレファントキャンプだ。国内旅行ブームに乗り、キャンプの集客は上々。動物虐待といわれることもある象乗りのアトラクションも、今のところミャンマーでは象の「再就職先」として必要といえそうだ。

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴3年)

 
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