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ジャコウネコのいる町

中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴17年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|インドネシア|2018年01月16日

ジャコウネコが作るコーヒー

ジャワ島で多く栽培されているロブスタ種のコーヒーの実がなる様子

ジャワ島で多く栽培されているロブスタ種のコーヒーの実がなる様子

 ルワックコーヒーは、インドネシアで生産されているコーヒーの1つだ。その生産方法は実にユニークで、ジャコウネコ(インドネシア語でルワックまたはムサン)と呼ばれる動物が、コーヒーノキの熟した果実のうち、甘いものを選んで果肉だけを食べ、種に相当するコーヒー豆を糞と一緒に排泄する。その糞から採取した豆を洗浄してよく乾燥させ、焙煎したものがルワックコーヒーなのだ。

 ジャコウネコの腸内の消化酵素や腸内細菌の働きにより、豆には独特の香りがあり、希少価値の高いコーヒーとしてインドネシア国外にも輸出され、日本でもインターネットなどで200グラム6000円前後で販売されている。

南ジャカルタにも生息!

筆者の自宅の庭で捕獲されたジャコウネコ

筆者の自宅の庭で捕獲されたジャコウネコ

 ジャコウネコは森林や草原に生息するといわれ、昆虫や鳥、小型動物などを食べる肉食・雑食の動物だ。私はこれまで、バリの観光地のコーヒー店で飼われているジャコウネコを見たくらいで、身近にはいない動物という認識だった。ところが、昨年の3月、南ジャカルタの住宅街にある庭付き戸建ての家に引っ越してから、その考えを改めざるを得なくなった。なぜなら、庭の木になる南国の果実(ジュルックバリ、ランブータン、ジャンブー)やコーヒーノキの果実が時々食い荒らされているからである。地元の人に聞くと、これはどうやらジャコウネコの仕業で、この辺りには何匹も住んでいるというのだ。確かに夜中に屋根の上を走り回る動物の気配がしたり、動物同士で喧嘩をしている声が聞こえたりする。

 そんなある日、庭に仕掛けておいたパパイヤ入りの木箱にまんまとひっかかった動物がいる。中を覗いてみると、猫のような毛皮で猫より体長が大きく、顔は鼻がとがっている。紛れもなく、ジャコウネコであった。とりあえず猫用のオリに入れてみると、活発に動き回り、こちらに懐こうともしないが、大きくて丸い黒目がなかなかかわいらしい。こんなにかわいいならペットにしようかと思ったのだが、ジャコウネコは私が思った以上に頭が良く、翌日には自分でオリの扉をこじ開けて脱走してしまった。

 それからまた夜な夜な、果実を食べにやってくる動物の気配を感じる日々が続いている。高層ビルが次々と建設され、MRTの工事が進んで近代的な街に変貌を遂げようとしているジャカルタだが、住宅街にはまだまだ緑が多く残り、野生の動物が暮らしている。開発が進んでも、人間と動物が共存できる町であってほしいと願う。

ジャカルタには、ルワックコーヒーを出すカフェも多く、中にはKopi Luwak(ルワックコーヒー)というズバリそのままの名前のコーヒー店もある

ジャカルタには、ルワックコーヒーを出すカフェも多く、中にはKopi Luwak(ルワックコーヒー)というズバリそのままの名前のコーヒー店もある

中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴17年)

月刊誌さらさ編集長

 
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