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配車アプリが群雄割拠のヤンゴン

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|ミャンマー|2017年06月08日

 外国人にとって、ミャンマーのタクシーは一筋縄では行かない。ほとんどが個人タクシーでメーターを備えておらず、乗車前に料金交渉をしなければならないからだ。これまで幾度もタクシー会社が生まれたり、政府がメーター制導入の推進を試みたりしたが、長続きしなかった。また、無線タクシーもなく、基本的に流しを捕まえるか、街の所々にあるタクシーのたまり場まで行って拾うかしかなかった。

ミャンマーのタクシーは、なぜかプロボックスが多い

ミャンマーのタクシーは、なぜかプロボックスが多い

ローカル企業が運営するHello CabとOWAY RIDE

ショッピングセンター入口に設置されたOWAY RIDEの受付

ショッピングセンター入口に設置されたOWAY RIDEの受付

 周辺のASEAN諸国では、2014年頃からUberやGrabがタクシー業界を席巻し始めた。この時期、ミャンマーは民主化を進める政府が携帯電話市場を外資へ開放。そのため、利用者が急増する過程にあった。
 2015年8月にはまず、地場のHello CabがUberやGrabを事業モデルとした、ミャンマー初のタクシー配車サービスを始めた。2016年に入ると、同じく地場のOWAY RIDEも同様のサービスを開始。大型ショッピングセンターの出入口付近にタクシー配車を行うブースを設けるなどして普及に努めた。

 これまで、タクシーを拾うのが困難だった夜遅くや早朝に利用しやすいことと、名前や電話番号があらかじめわかる運転手の車に乗れる治安面での安心感とで、これら2社のサービスは市民権を得つつあった。
 そして2017年3月、シンガポールを拠点として東南アジアを中心に展開するGrabがミャンマーへ進出してきた。続けて5月には、世界的知名度を誇るUberも営業を開始。先行するHello CabとOWAY RIDEに対し後発の外資2社は、豊富な資金力を武器に、現在大きく攻勢をかけている。

平均的なタクシー運転手の売り上げは4,000円/日ほど

Uberと契約していることを示すシール

Uberと契約していることを示すシール

 Grabのプロモーションを説明する前に、平均的なヤンゴンのタクシー運転手の収入についてみてみよう。
 ヤンゴンにおいて個人タクシーの多くは、車の所有者と運転手が異なる。資金に余裕のある個人が車を購入し、運転手に貸し出すケースが多いためだ。中には何台ものタクシーを擁するオーナーもいる。
 運転手Aさんの場合、だいたい1日に平均5万チャット(約4,090円)ほどを売り上げているという。このうちオーナーの取り分が1万チャット(約820円)で、ガソリンにも1万チャットほど。さらに、数ヶ月に1度はオーナーと折半する形でタイヤやバッテリーを交換せねばならず、その分もためておく必要があり、1日の稼ぎは単純計算で2万7,000チャット(約2,210円)ほどだ。

赤字覚悟のGrabのプロモーション

 こうした運転手たちを囲い込み、利用者に高い利便性を感じてもらうため、Grabは開業記念のプロモーションを展開している。
 運転手がGrabアプリからの客を乗せた場合、売り上げの15%をGrab側に支払うが、1週間に60回以上乗せたら、報奨金として15万チャットを受け取ることができるというのだ。つまり、1日5万チャットを稼ぐ運転手だと、1週間分のGrabの取り分は単純計算で52,500チャット(約4,250円)となり、大幅な赤字だ。しかし、こうした方法をとっても、現在は参加する運転手を増やし、顧客の囲い込みを目指しているのだろう。

Grabで予約すると、運転手の顔写真、名前、電話番号、車のナンバーが表示される

Grabで予約すると、運転手の顔写真、名前、電話番号、車のナンバーが表示される

 これまでタクシーに関しては著しく制度が立ち遅れていただけに、配車サービス参入の障壁は少ないといわれていたミャンマー。その予想は、どのような結末を迎えるのだろうか。

※為替レートは、2017年6月2日現在のもので計算。

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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