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“ビール後進国”ミャンマーで、キリンが市場をほぼ独占へ

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

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アジア・オセアニア|ミャンマー|2017年05月01日
MBLの主力ブランド「ミャンマー ビール」は、世界的に評価が高い味を誇る

MBLの主力ブランド「ミャンマー ビール」は、世界的に評価が高い味を誇る

 2017年2月、キリンホールディングスはマンダレー・ブルワリー(Mandalay Brewery Ltd./以下「MDL」)を合弁会社化し、51%の持ち分を取得することを発表した。ミャンマー北部に拠点を置くMDLは国内シェア10%で、ミャンマー第2位のビール会社だ。キリンは2015年に、国内シェア約80%のミャンマー・ブルワリー(Myanmar Brewery Ltd./以下「MBL」)の株55%を5億6,000万US$で取得しており、これでミャンマーにおけるビール市場のほとんどを手にしたことになる。

消費が落ち込む国内から成長著しい海外へ

 ここ数年、日本ではビール消費量が減少の一途をたどっている。国税庁課税部酒税課が発表した成人1人当たりのビール消費量は、2004年の35.4ℓから2014年の25.0ℓへと落ち込んでおり、発泡酒や第三のビールを含めても減少傾向に歯止めがかかっていない。
 飲酒を良しとしない仏教を篤く信仰するミャンマーの場合、1人当たりの年間ビール消費量は3.7ℓだ。これは周辺国であるベトナムの41ℓやタイの33ℓと比べて極端に少ない(キリンのHPより)が、人口約5,100万人に占める若年層の比率は非常に高く、現在の消費量の少なさはすなわち、将来の伸びしろでもある。キリンは国内市場の縮小をふまえ、ミャンマーのような海外市場に積極的に打って出ているといえる。

高価格帯の新ブランドを投入

2016年3月に販売を開始した「キリン イチバン」

2016年3月に販売を開始した「キリン イチバン」

 MBLではキリンの参画後、相次いで新ブランドを発表。特に「ミャンマー ビール プレミアム」と「キリン イチバン(「キリン一番搾り」をミャンマー向けにアレンジした商品)」では、これまでのミャンマー ビールよりワンランク上のビールを目指したという。
 これらの新ブランドビールは、缶入りや瓶入りの製造ラインが整うまでの間、市内の高級レストランを中心に、生ビールとして提供する方法をとった。ミャンマーの飲食店がビールを出す場合、営業許可のほかにアルコール販売の許可も必要だが、その許可には生ビール販売ができないタイプも多い。このため当初、新ブランドの展開スピードは緩やかなものだったが、2016年6月に缶と瓶の販売が始まり、販路が一気に広がった。

アルコールに厳しい新政権の方針

 ただし、逆風もあった。2016年に誕生したアウン・サン・スー・チー氏が率いる新政権は、公共の場における禁酒の取り締まりを強化したため、ヤンゴン市内の公園内で営業する飲食店の多くでビールが飲めなくなった。また、バーやカラオケなどの営業時間の短縮や、大量のアルコールを消費する水かけ祭りの規模縮小、アルコール類の広告禁止に対する取り締まり強化などにも手をつけている。
 とはいえ、2018年までにミャンマーのビール販売額は、2015年を基準に試算して約1.8倍まで伸びるという予測もある。キリンだけでなく、カールスバーグやハイネケンも新ブランドを投入している。ミャンマーのビール市場はさらに活気を帯びてきているのは間違いない。

ヤンゴン市街はずれに建つMBLの工場

ヤンゴン市街はずれに建つMBLの工場

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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