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革命前のクラシックカーが走るキューバ、オープンカー観光タクシーが人気

斉藤 真紀子

ライター。ウェブマガジン「キューバ倶楽部」編集長

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北中南米|その他|2017年03月17日
ハバナの街並み

ハバナの街並み

明るい陽射しを浴びて輝く、ローズピンク色のオープンカー。このド派手なクラシックカーでキューバの首都、ハバナを一周すると、映画スターになったような心持ち。これが今人気の「市内一周観光タクシー」だ。

 最近注目を浴びている、カリブ海の社会主義国キューバ。長らく敵対していた米国と2015年に国交が正常化し、昨年は革命政権のリーダーだったフィデル・カストロ前国家評議会議長がこの世を去った。

 そんな過渡期にあるキューバは治安のよさも相まって、世界から観光客が急増している。魅力は「タイムトリップをしたような街並み」だ。

自営業枠の拡大とともに登場

スペインのコロニアル調の建物が、1959年のキューバ革命後から変わらず、朽ちつつも美しい面影を残している。そこに大きな体を揺らしながら、色鮮やかなクラシックカーが走り抜ける。革命前のアメ車を、部品や塗装や内装を修理して、キューバの人々は乗り続けているのだ。

 クラシックカーは地元の人の乗り合いタクシーとして利用されてきた。私も何度か乗ったが、とてつもなく揺れるし、エンジン音がうるさいし、エアコンがなく窓をあけるので排気ガス臭いし、ジェットコースターのような乗り心地だった。キューバは二重貨幣制度を敷いているのだが、地元の乗り合いタクシーは人民ペソ(CUP)で支払う。観光客用のタクシーは車種も新しく、多くは冷房もきいていて、兌換ペソ(CUC)払いだ。

 この二重貨幣制度があるため、キューバの物価をひとくくりにして説明するのが難しい。現地で流通しているペソ(CUP)と、外国人が使うペソ(CUC)の貨幣価値は25倍ほど差があり、使える通貨によって店が違ったりもする。キューバ人の月収は2,000~3,000円ぐらいと言われるが、これは人民ペソに換算すると、日本での同額のおカネとは異なる購買力がある。一方、外国人用の兌換ペソは1CUCが1米ドルぐらいの換算で、ランチが5~10CUCぐらい、モヒートなどのカクテルが3~5CUC、旧市街のホテルは1泊100CUC以上のところが多く、欧米や日本の物価と比べてそう安いとも言えない。

 赤、ピンク、黄色、オレンジといった、ビビッドな外装のオープンカー観光タクシーは1時間を超える、スペイン語や英語でのガイド付き運転で料金は40CUC(約4,500円)。5人で乗ればリーズナブルだ。

 ここ数年で街を一周する派手色のタクシーが登場した背景には、キューバ政府が少しずつ進めてきた「市場主義経済の導入」がある。フィデル氏の弟、現在トップを務めるラウル・カストロ国家評議会議長が、2010年に自営業枠を大幅に拡大したのだ。それでもまだ、200を超えるぐらいの限られた職種ではあるのだが、観光タクシーの運転手も、新進の自営業者である。

人気の国営のアイスクリーム屋「コッペリア」<br />
列は現地人用と外国人用があり、貨幣も違う。現地人用の列は常に混雑。<br />
以前はここと映画館ぐらいしか大きな娯楽がなかったが、<br />
最近は少しずつ街に小さなアイスクリーム屋ができている。

人気の国営のアイスクリーム屋「コッペリア」
列は現地人用と外国人用があり、貨幣も違う。現地人用の列は常に混雑。
以前はここと映画館ぐらいしか大きな娯楽がなかったが、
最近は少しずつ街に小さなアイスクリーム屋ができている。

予想外にディープな観光スポット

ハバナ一周観光タクシー。うっそうとした森のところで停車

ハバナ一周観光タクシー。うっそうとした森のところで停車

 さて、オープンカーは乗り心地もなかなかに、街中を抜け、海沿いを通って住宅街へと向かった。「このあたりにフィデルが住んでいた家もありました」なんて解説もはさみながら。
やがて木がうっそうとした所に車を止めたので、一緒にいた日本人女性の友人と顔を見合わせた。「こっち」と明るく手を振って、先導する運転手のお兄さん。よく見ると川べりに鶏の羽と少しの血痕が散っている。「ここはサンテリア(ヨルバの民俗信仰とカトリック教が合わさった宗教)でいけにえが行われた場所です」。すごいでしょ、と言わんばかりの笑顔のお兄さんの横で、「なんとディープな市内観光だ!」と、写真を撮ることも忘れて、あっけにとられてしまった。

斉藤 真紀子

ライター。ウェブマガジン「キューバ倶楽部」編集長

日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞社出版『AERA』専属記者を経てフリーランスライターに。

 
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