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黎明期のミャンマーマイクロファイナンスは貧困を削減できるのか

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

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アジア・オセアニア|ミャンマー|2017年03月09日
Jbrain導入を発表する記者会見

Jbrain導入を発表する記者会見

 2016年12月1日、ミャンマーのマイクロファイナンス向け経営情報システム「JBrain」の導入記者会見がヤンゴンで開かれた。開発したのは金融システム開発会社の株式会社日本ブレーンとミャンマーでソーシャルビジネスを行うリンクルージョン株式会社で、導入を決めたのは、ヤンゴン管区とバゴー管区でマイクロファイナンス事業を展開するMJIエンタープライズ。すべて日系企業で、MJIはこのシステムの開発にも協力している。

 マイクロファイナンス向けソフトは既に世界中で流通しているが、マイクロファイナンス市場自体が未成熟なミャンマーへは既存のものは導入が難しく、同国向けソフトの開発が待たれていた。

マイクロファイナンス解禁は2011年

 実は、ミャンマーがマイクロファイナンス市場を開放したのは2011年。ほんの数年前のことだ。取得条件が厳しくなかったこともあって、2016年5月時点で計260の企業・団体が申請を果たした。

 しかし、ライセンスを得たものの、業態を変更したりで返納したケースも93件あり、実際に開業に至ったのは167の企業と団体。内訳は、国際NGOが5団体、国内NGO24団体、ローカル企業122社、合弁企業4社、そして外資系企業が22社となっている。もっとも、相当数は活動実態がそう活発とはいえないところも含まれているようだ。

 日系は、冒頭のMJIエンタープライズのほか、イオンやマルハンなどが子会社等を通じて進出している。

金利以外のケアがポイント

 MJIエンタープライズの加藤代表 取締役

 MJIエンタープライズの加藤代表 取締役

 ミャンマーのマイクロファイナンス法では融資金利が年30%まで、貸付上限は500万Ks(約42万円)で担保は取れない。金利は各社ほぼ同じため、その他の部分で他社に差をつける必要がある。MJIの加藤侑子代表取締役によれば、返済方法や福利厚生、顧客のケアなどがポイントになるという。

 「弊社の場合、返済金の回収は社員が村々を直接訪問して行っています。そうすることで貸付金が申請内容通りに使われているかといった事業内容のチェックのほか、顧客の相談にも乗れ、より密着したケアが可能になるからです」

 担保が取れないことから、返済方法にも各社工夫を凝らしている。MJIでは5人1組のグループに貸与し、誰かが欠ける事態になった場合、残りの4人が25%ずつ負担する仕組みを作っている。

 また、貸付金のうち5%を担保代わりに預金してもらい、うち1%を福利厚生用に積み立て、メンバーの誰かが亡くなった場合などに見舞金として支給。こうすることで、連帯保証するメンバーの負担も減らすことができるという。

需要を満たせているのは3割

 ミャンマーのマイクロファイナンス市場はまだまだ発展段階にある。そのため、状況に応じてその都度、規制の強化や緩和を行っている。最近では、事業のために使用する農業機械などにしか認めてこなかった物品への融資を、携帯電話やバイクといった範囲まで広げた。

 法制度はまだ磐石とはいい難いが、それだけにビジネスチャンスがあるとみて、今後も進出が続きそうだ。また、冒頭のマイクロファイナンス向けソフトのような周辺事業の需要もまだまだ掘り起こせそうだ。

農村部に足を運んで活動することも (写真提供:MJIエンタープライズ)

農村部に足を運んで活動することも (写真提供:MJIエンタープライズ)

 加藤代表はマイクロファイナンスの意義をこう語る。

 「ミャンマーでのマイクロファイナンス需要は年間約10億ドルで、現在はまだ、その3割ほどしか満たせていないと言われています。企業として利益追求するだけでなく、金融アクセスのないミャンマーの人びとに必要とされる金融サービスを提供することで、貧困層、とくに子どもたちの豊かな未来の創造に寄与したいと、強く願っています。貧困が原因で涙を流す子どもたちがいない世界、それが私たちの理想なのです」

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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