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ベトナムで注目が高まる「日本式の企業マネジメント方法」

中安 昭人

オリザベトナム株式会社代表

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|ベトナム|2015年07月22日

日本の教育機関がベトナム当局から表彰

表彰式で賞状を受け取るVJCCの水野<br />
チーフアドバイザー

表彰式で賞状を受け取るVJCCの水野
チーフアドバイザー

 ベトナムでも日本製品を当たり前に見かけるようになった。ベトナム人にとっては価格が高く「高嶺の花」という傾向はあるものの、日本製品への信頼感は高い。車、バイク、家電などの日本製品を「ハードウェアのメイドインジャパン」とするなら、今、ベトナムでは、その製品の裏にある日本流マネジメント方法など「ソフトウェアのメイドインジャパン」への注目が高まっている。

 さる2015年5月24日、ハノイとホーチミンに拠点を持つVJCC(ベトナム日本人材協力センター)が、ベトナムの公的機関である「学習奨励中央機構」から表彰を受けたのは、それを象徴する動きだと言っていいだろう。本年度、表彰されたのは「優れた教育機関」20団体、「優れた教育教材を作った機関」20団体の計40団体で、VJCCは「優れた教育機関」の一つとして表彰を受けた。

2015年5月24日にベトナム通信社センターで行われた表彰式の様子。<br />
それぞれの団体に、賞状と記念のトロフィーが手渡された。<br />
表彰式の様子はテレビでも放映された。

2015年5月24日にベトナム通信社センターで行われた表彰式の様子。
それぞれの団体に、賞状と記念のトロフィーが手渡された。
表彰式の様子はテレビでも放映された。

VJCCからは水野チーフアドバイザー、エン・ハノイセンター所長、<br />
ミン・ホーチミンセンター所長および若林調整員が表彰式に参加した。

VJCCからは水野チーフアドバイザー、エン・ハノイセンター所長、
ミン・ホーチミンセンター所長および若林調整員が表彰式に参加した。

 VJCCはJICA(国際協力機構)を窓口とする日本と外国貿易大学を窓口とするベトナム両国政府の合意のもと設立された、人材育成機関だ。ベトナムでは、ハノイとホーチミンにセンターを開設している。日本語教育、日本式ビジネススキルを教えるセミナーなど、様々な教育プログラムを実施しているが、中でも、ユニークなものが2014年度に第6期生を迎え入れた「経営塾」である。経営塾は、ベトナム工業界を牽引できる経営者人材の育成を目的として開設されたもので、「2020年までに工業国になる」ことを目標とするベトナムのための人材育成を、世界に冠たる「物作り先進国」日本が支援しようというものである。

毎月30時間程度の講義が10か月間続く「経営塾」

VJCCホーチミンの若林勇飛氏

VJCCホーチミンの若林勇飛氏

 経営塾は普通のセミナーとはかなり様子が異なる。まず受講できるのは、会社の社長もしくは管理職のみ。講義内容も「短期と長期の財務管理」「経営戦略に基づくBSC、BPR」「競争戦略・成長戦略・ブランド戦略」など、実践的なテーマが並ぶ。講師陣も豪華だ。日本企業の経営者が中心で、企業のコンサルティング経験が豊富なベトナム人が担当することもある。

 研修の時間は1日6時間。これが毎月5日間程度実施される。開講期間は、2014年10月末から2015年8月初めまでの約10か月間。
「社長業や管理職という激務をこなしながら、これだけ長時間・長期間の講義を受けるのは大変だろうと思いますが、欠席者はほとんどありません。そんなところにも、受講者側の高い熱意を感じますね」
 と語るのはVJCCホーチミンの若林勇飛氏。

 今期の受講料は2500ドル。ただし成績優秀者は、2週間の日本研修を受講でき、その費用もここに含まれているから、講義自体は無料で提供されていると言っても過言ではない。

 定員は25名。これに対し、第6期は約3倍の応募者があった。口コミで経営塾の評判を聞いて応募してきた人がほとんどだそうだ。応募者は、書類選考と面接によってふるいにかけられ、20代前半から50代半ばまでの25人が選抜された。10か月間、厳しい研修を共に受けることで、横のネットワークもできる。

「受講者同士が自主的に食事会などを開催し、そこで経営上のノウハウを学び合うこともあるそうですよ」「修了間際の受講者のほとんどに共通する感想は、『経営塾では経営上の多くの実践的知識を得たが、最大の成果は、講師や他の受講者との交流を通しての自身の成長と意識の変化、人を育てて生かすことが経営者として一番大切だと改めて気付けたこと』ということです。」
(前出・若林氏)

2014年10月20日、VJCCホーチミンにおいて行われた<br />
経営塾開講式の様子。日本国総領事館より中嶋総領事、<br />
ホーチミン日本商工会の百石会長および大林事務局長なども出席した。

2014年10月20日、VJCCホーチミンにおいて行われた
経営塾開講式の様子。日本国総領事館より中嶋総領事、
ホーチミン日本商工会の百石会長および大林事務局長なども出席した。

「製品の輸出」から「ノウハウの輸出」へ

 VJCCは経営塾以外にも、ベトナムが工業国になる上で必須となる裾野産業で働くベトナム人を中心に、毎年約2000人の産業人材の育成をしている。またビジネスに特化した日本語研修教育に1000人、留学支援をする人数も2500人にのぼる。今回の表彰は、それらの活動に対する高い評価と、今後への期待が感じられる。

 確かにベトナムでも、ホウレンソウ、KAIZEN、5Sといった言葉は既に知られている。しかしそれは管理職が中心で、一般社員までは浸透していない。また管理職も知識としては知っていても、それを自分の会社の中で具現化していくにはどうしたらいいか、という点に関しては「手探り状態」という人も少なくない。

 日本が物作り大国になれたのは、様々な「仕組み」もさることながら、平社員、そしてパートさんやアルバイトさんまでも、業務改善に対する意識が浸透していることだろう。仕組みは座学で学ぶことができても、それをどのようにして社員全員の意識に浸透させるかは、テキストだけでは学ぶことができない。

 そんな中、実際に日本で会社社長や管理職の立場にいる第一線の企業人から、具体的な取り組みや実戦的なノウハウを学ぶ場があるというのは、ベトナムの産業界の成長にとって大きなプラスだ。日本も、出来上がった製品をベトナムに輸出するだけでなく、経営ノウハウを輸出することで、両国の関係は、より豊かなものになるに違いない。

経営塾第6期の受講生25人。約半数が女性だ。

経営塾第6期の受講生25人。約半数が女性だ。

中安 昭人

オリザベトナム株式会社代表

ベトナム在住

 
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