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激増する訪日ベトナム人旅行者の心を掴む一歩上の戦略とは

中安 昭人

オリザベトナム株式会社代表

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|ベトナム|2014年12月15日

訪日ベトナム人の数は2年間で倍以上に

日本旅行を最も早い段階で売り出した国営最大手旅行会社であるサイゴンツーリストの旅行者用窓口

日本旅行を最も早い段階で売り出した国営最大手旅行会社であるサイゴンツーリストの旅行者用窓口

ここ1~2年、ベトナム人の間で日本旅行熱が高まっている。2010年が4万1862人、2011年が 4万1048人、2012年が5万5156人と推移していた訪日ベトナム人数は、2013年には8万4469人と一気にここ数年の約1.5倍に増えた。2014年は10月までの累計で既に10万6000人と、前年度の数字を大幅に超えている。月ごとに見ても、実に過去34か月連続で各月の最高記録更新しているのだ。旅行会社の宣伝には、昔ながらの定番海外旅行である「バンコク・パタヤ」「カンボジア」などと並んで、「日本」が載るようになった。それには、もちろんいくつかの背景がある。

いちばん大きな要因は「ベトナム人に対する入国ビザの緩和」だろう。訪日旅行者が増加したきっかけの1つとなったのは、2013年7月に開始されたベトナム人へのマルチビザの発給だろう。さらに2014年6月、外務省はインドネシア、フィリピン、ベトナム、インドに対するビザ条件緩和を発表した。かつて日本好きのベトナム人の間では「日本には行きたいけど、どうせビザが出ないから」と諦めモードだったが、その門戸が広くなって来ているのである。

2013年7月にビザ免除となったタイの場合を見ると、訪日人数が2012年の26万人から、2013年は45万人と1.7倍増となっている。ベトナムがビザ免除となれば、訪日人数はこれと同じくらいの伸びが期待できるだろう。

左はベトナムの旅行雑誌。表紙を日本が飾ることも珍しくない。右は日本政府観光局(JNTO)が作った、日本旅行の基礎知識をまとめたパンフレット。

左はベトナムの旅行雑誌。表紙を日本が飾ることも珍しくない。右は日本政府観光局(JNTO)が作った、日本旅行の基礎知識をまとめたパンフレット。

定番コースだけではなく、特色あるツアーの企画が次々と

現在の訪日旅行は、ゴールデンルートと言われるものが中心だ。東京で浅草や東京タワーなどを観光し、ディズニーランドで遊んだ後、富士山へ。それから京都観光して、大阪から帰国。もしくはその逆ルートである。旅行代金は日本円に直して15~20万円程度。ベトナムの月収の全国平均が2万円程度であることを考えると高額商品だが、こういう旅行ができる富裕層が確実に増えているのである。

そういった層を狙って、ベトナムの旅行関係者の間では、もっと特色のある旅行商品の造成が進んでいる。

例えば、ベトナム企業の日本への視察旅行である。日本企業のベトナム進出が増えるにつれ、日本企業をビジネスパートナーにしたいベトナム企業、日本の先進の技術を学びたいベトナム企業は増えている。そういった企業の経営者や管理職を対象に、日本で開かれている展示会を見学したり、日本の製造現場などを見学したりするツアーである。日本企業のベトナム視察旅行は盛んに行われているが、その逆はまだほとんど行われていない。

メディカルツーリズムも可能性がある。ベトナムの富裕層が高度な診療を受けたいときは、今はタイのバンコクかシンガポールに行く場合が多い。医療技術の高さでは勝るとも劣らない日本が、その一角に食い込める余地は十分にある。

またベトナム人学生が日本の一般家庭に宿泊する、ホームステイツアーを企画している旅行会社もある。短期間であっても日本の家庭生活を経験することで、観光コースではない素顔の日本に触れたいというベトナム人は、決して少なくないだろう。日本の大学へ留学を希望するベトナム人もこれから増えるに違いない。そのための下見として、このようなホームステイツアーに参加する富裕層の子弟もいるだろう。

ヴィエットトラベルは訪日旅行だけで10種類以上のツアーを催行している(奥)。また最大手旅行会社であるサイゴンツーリストでは、カラーの旅行パンフレット(手前)で日本旅行を宣伝している

ヴィエットトラベルは訪日旅行だけで10種類以上のツアーを催行している(奥)。また最大手旅行会社であるサイゴンツーリストでは、カラーの旅行パンフレット(手前)で日本旅行を宣伝している

ベトナムでは日本関連イベントが花盛り

もちろん従来型の観光旅行にもまだまだ可能性はある。2014年は1月と10月の2回、国土交通省観光庁と日本政府観光局(JNTO)の共催で、「ビジット・ジャパン(VJ) トラベルセミナー・商談会」がハノイ、ホーチミンで開催された。これは旅行関係業者を対象としたもので、日本側からはセラーとして20~30の団体が、ベトナム側からはバイヤーとして30~50の団体が、それぞれ参加した。そこでは、長野県、栃木県、茨城県、岐阜県などの地方自治体も参加し、「東京・大阪・富士山」以外の日本の魅力をPR。ベトナムの旅行関係者には新鮮だったようだ。

これに限らず、ハノイ、ホーチミンでは日本関連のイベントが毎月のように行われ、日本料理、伝統芸能、そして漫画に代表されるポップカルチャーなど、日本のもつ様々な魅力を発信している。

元々、ベトナムは日本人が想像する以上に親日国である。今後、旅行にしてもビジネスにしても、もっと数多くのベトナム人が日本を訪れるようになるに違いない。

大手旅行会社ホアビンツアー(ピースツアー)の前に掲げられた日本旅行宣伝の看板。

大手旅行会社ホアビンツアー(ピースツアー)の前に掲げられた日本旅行宣伝の看板。

出典

・日本政府観光局 訪日外客数の動向
http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/visitor_trends/

中安 昭人

オリザベトナム株式会社代表

ベトナム在住

 
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