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どうしてベトナムで露天風呂付きホテルが増えているのか

中安 昭人

オリザベトナム株式会社代表

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アジア・オセアニア|ベトナム|2014年10月13日

日本人ビジネスマン向けの露天風呂付きホテルが次々と

ベトナムへの日系企業の進出が急速に増加しているのは、よく知られている通りだ。それにともない、様々な関連ビジネスも増えている。中でも最近、注目されているのが、日本人ビジネスマン向けのホテルである。今年6月には、日本でも人気があるスーパーホテルが、ハノイにベトナム1号店をオープンして、日本でも話題になった。スーパーホテルは、既にタイのバンコクに出店しており、2番目の海外拠点として選んだのがベトナムだった。

このような日本人向けのビジネスホテルのはしりとなったのが、現在、ホーチミン市、ハノイ、ダナンと3都市で6つのホテルを持つ「東屋」(あずまや)チェーンである。東屋の1号店がホーチミン市にオープンしたのは、2011年9月のこと。創業者は、ハン(韓東熙=ハントウキ)氏という日本生まれ日本育ちの若者。大学卒業後、アメリカに渡りロサンゼルスの日本語フリーペーパーの仕事をしていたが、ベトナムに可能性を感じ、ホーチミン市に移住して東屋を開業した。まだ27歳の若さであった。

ホーチミン市の日本人街にある東屋1号店の入り口。<br />
元々、ホテルだった建物を「和風」のコンセプトの元、全面的に改装した。<br />
1泊40ドル(約4400円)前後~という手頃な料金設定も人気の理由。

ホーチミン市の日本人街にある東屋1号店の入り口。
元々、ホテルだった建物を「和風」のコンセプトの元、全面的に改装した。
1泊40ドル(約4400円)前後~という手頃な料金設定も人気の理由。

当時も日本からの出張者は多かったとは言え、ホテルの数も多いホーチミン市では、閑古鳥の鳴いているところも少なくないという状況。そんな中で、さらに日本人だけにターゲットを絞るというのは、「マーケットが狭くて成立しないのでは?」と疑問視する声もあった。しかし、屋上の露天風呂、本格的な和朝食、そして館内はすべて日本語のみで用が足せるというコンセプトが受け入れられ、すぐに人気ホテルに。2014年9月には、ベトナム中部最大の都市・ダナンにもホテルを出店し、6軒のチェーンにまで成長している。

2014年だけで日本人向けホテルが4軒登場

東屋1号店にある露天風呂。<br />
「風呂だけ利用したい」という在住者からの要望に応えて、お風呂だけ利用というコースも設けている。

東屋1号店にある露天風呂。
「風呂だけ利用したい」という在住者からの要望に応えて、お風呂だけ利用というコースも設けている。

その後、東屋の成功に刺激されたのか、ベトナムで日本人ビジネスマン向けのホテルが次々と登場する。2014年4月には、ハノイに「サクラホテル」がオープン。そして冒頭にも書いたように、同年6月には日本のメジャーであるスーパーホテルが開業する。ホーチミン市近郊で、東急が都市開発に乗り出したことで知られるビンズオン省にも、2014年2月に日系のホテル「レストラン&ホテルさくら」ができた。どのホテルも、東屋同様、大浴場と和食に力を入れている(ただしスーパーホテルのみ大浴場はなし)。9月にオープンした東屋ダナン店も入れると、今年だけで日本人ビジネスマン向けホテルが4軒増えた。

進出している日系企業の数の多さでは、バンコク、上海やシンガポールのほうが、ベトナムよりも多い。しかし、東屋のようなスタイルのホテルは、ほとんどない。ベトナムよりも先進国であるそれらの都市でなら、露天風呂を作るのはベトナムよりも簡単だし、より豊富な日本食材が容易に入手できるにも関わらず、である。

ビジネスチャンスが豊富な海外では、資本力より発想の転換

それなのにベトナムで日本人向けビジネスホテルが多いのは、ひとえに東屋の存在があったからではないだろうか。東屋がオープンする前は、在住日本人の中には「ベトナムに来てまで露天風呂に和朝食? そんなコンセプトは受けない。やっぱりベトナムらしさが感じられるホテルでないと」と批判的な声もあった。つまり東屋の成功は、「日本人ビジネスマンが、海外でもまるで日本にいるかのように感じられるホテルは、きっと需要がある」という発想の勝利だったと思うのだ。

日本では当たり前になっている商品やサービスで、海外では得られないものはたくさんある。つい数年前までベトナムには24時間営業のコンビニがなかった。今でも、ホーチミン市にはあるが、ハノイにはまだない。ベトナム人の間でも寿司は定着してきたが、回転寿司の店は数軒しかない。自動販売機はほとんど普及していないし、ウォシュレット付きの便座もほとんどない。ファミリーレストランもないし、バイク便もない。それらがベトナムにないのは、それぞれ理由があるのだろうが、その中には「需要もあり、実現可能性も高いのに、先入観が邪魔して誰も手を出していない」というビジネスもあるのではないか。

東屋のように、発想を転換することで見つかるビジネスチャンスは、海外にまだまだあるに違いない。

出典

・東屋
http://azumayavietnam.com/

・サクラホテル(ハノイ)
http://www.sakurahotel.net/

・スーパーホテル(ハノイ)
http://www.superhotel.co.jp/s_hotels/hanoi/

・レストラン&ホテルさくら(ビンズオン省)
http://www.phamvansakura.vn/

中安 昭人

オリザベトナム株式会社代表

ベトナム在住

 
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