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社会問題化する中国医療現場

Marc Mizuno

中国上海市(在住歴8年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|中国|2014年02月10日

患者による暴力

2013年10月25日、セッコウ省温岭市で医師が患者に刺されて死亡、看護婦などの医療スタッフが怪我をするという事件が起きた。この事件がきっかけで医師や看護婦などの医療スタッフの安全が取り沙汰されている。

医師が患者から暴行を受けたり、最悪の場合、殺されたりする事件はどうやらこれが最初ではなく、中国国内で頻発しているという。

医師に同情を寄せたいところだが、一方で患者を擁護する声もある。中国のツィッターである微博上には、事件は起こるべくして起こったとして患者に同情を寄せる声も多い。その中には、「患者をさんざん待たせておいた挙げ句、診察はわずか数分間、患者に対する態度も冷たい」「なぜこんなに高い医療費を払わなければいけないのか理解できない」という声もある。

人気の低い医師としての職業

先進国では高待遇、社会的ステータスも高い医師職だが中国では逆だ。実際、最も収入が高いとされる医療科目をアメリカと中国で比較してみるとアメリカは年収30万ドル以上に対し中国は1万ドル強。その差は20~30倍とも言われている。

経済発展路線を突き進む中国では、昨今、インフレで物価は上昇し、都市部では住宅価格が高騰、現在の給与体系では医師の生活は決して楽ではない。

また、中国の医師は過酷な労働を強いられることでも有名だ。人口が多い中国では患者数も半端ではないほど多く、朝から晩まで休むこともなく患者をこなさなくてはいけない。苛酷な長時間労働だ。

中国でも有名な上海の総合病院。毎日多くの患者が家族同伴で訪れる

中国でも有名な上海の総合病院。毎日多くの患者が家族同伴で訪れる

社会問題化する医療事情

写真は上海の大気汚染。このような大気汚染は中国中で起こっており、患者数の増加につながっている

写真は上海の大気汚染。このような大気汚染は中国中で起こっており、患者数の増加につながっている

このような中、若い世代の中には医師になりたいという人が減っている。どうせ大学を卒業して就職するのであれば、どこか外資系の会社に勤めたほうがよほどマシな給料がもらえるし福利厚生もよいからだ。

医師の減少の一方で、医療事情を悪化させているのが患者数の増加だ。高齢化、大気汚染、食品安全問題により健康問題を抱える人口は増え続け、医師と患者の不均衡はますます大きくなっていると言われている。

日々の診察の中で医師へのプレッシャーは大きく、あまりの忙しさのあまり患者に対する態度が冷淡に感じられたり、疾患を見落とすなどのミスも出てきている。最悪の場合、患者が亡くなってしまうというケースもある。

また、医療側と製薬会社が裏でつながり、薬を処方することによって医師が副収入を得、そのツケを高額な医療費負担という形で患者が払っているという現実も報道されている。

反対に患者やその家族としては、さんざん待たされた挙げ句病気を治してもらえない、あるいは医療費が高すぎるという医師に対する不満不信が蓄積している。

急がれるソーシャルインフラ構築

GDP世界第二位と表面だけが誇張されるのとは裏腹に、中国の内情を明確に描き出しているのが医療現場だろうか。だとすると、この国の成熟度はまだまだということになろう。なぜならば、自国民の健康を守れないとするならば、その国に明るい未来は保障されないからだ。

出典

・アメリカ・中国の医師収入比較(中国語)
www.cmt.com.cn/detail/408003.html

・中国:高まる医療不信、患者家族による医師襲撃事件が頻発
www.newsclip.be/article/2013/11/02/19598.html

・Tensions rise between doctors and patients in China
http://edition.cnn.com/2011/10/14/world/asia/china-doctor-attacks/index.html?iref=allsearch

・英グラクソ中国法人の贈賄事件は企業ぐるみの行為=新華社
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE98207X20130903

Marc Mizuno

中国上海市(在住歴8年)

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