トップ  >   プログラム  >   世界の街角ライブラリー  >   上海にみる高齢化の様子

プログラム|世界の街角ライブラリー

上海にみる高齢化の様子

Marc Mizuno

中国上海市(在住歴8年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|中国|2013年06月24日

公園の風景は高齢者の縮図?

毎日通勤途中に通る自宅近くの公園。そこは朝晩になると多くの人が集まってくる。音楽に合わせて体操をする人、太極拳をする人、バトミントンをする人など、グループが点在している。夜になると公園の一角はダンス場と化す。しかし、その多くは高齢者だ。
 実はこの光景、上海のあちこちで目にする。どれも自主的に組織されたもので参加は自由、年齢制限もないが、これだけ多くの高齢者を眼前にすると、中国の高齢化を実感した気分になる。

早朝の公園で運動を楽しむ高齢者たち

早朝の公園で運動を楽しむ高齢者たち

上海の高齢化率はトップレベル

一般的に男性が60歳、女性が55歳と定年が早いため、中国では60歳以上が高齢者とされる。上海市の場合、市人口の25.7%(2012年末)が高齢者だ。ちなみに中国全体の高齢化率は14.3%(2012年末)なので、上海はかなり高いということになる。高齢者の基準が違う日本(65歳以上)と一概には比較できないが、高齢化率で言うならば、日本の24.7%(2013年)を更に上回っている。ということは即ち上海は世界でもトップレベルの高齢化率を持つ都市ということになる。

―日本とは違う老人ホーム

 これだけの高齢化を抱えながら、日本でいうところの高齢者福祉サービスは意外に手薄だと言える。敬老院(または養老院)と呼ばれる老人ホームは存在するが、日本の老人ホームとは違い、24時間態勢で専門の介護スタッフがいるということはない。敬老院に入る高齢者は身寄りがなかったり低所得だったりするだけで、普通に生活できる人が多い。住居を兼ねた老人憩いの家のようなイメージだろうか。他に、民間企業が運営する老人ホームがあるが、こちらはレクリエーション施設や看護システムが整い生活は快適だ。しかし、これは一部のお金持ちにのみ許されるサービスだ。

上海の老人ホーム。日本のように施設という感じはなく、市民が住む住宅の1つといった感じだ。

上海の老人ホーム。日本のように施設という感じはなく、市民が住む住宅の1つといった感じだ。

伝統的な親孝行意識

親孝行をとりわけ大切にする国民柄、中国では子供が親の世話をするのが一般的だ。都市部である上海では、子供は結婚後、その多くが親と別居をする。しかし、家事手伝い、孫の面倒、学校の送り迎え、一緒に食事をするなど、親子の行き来は頻繁だ。共働きが一般的な夫婦は仕事に専念でき、親も孫との時間を持てることは嬉しい。
家族間の交流の他に、高齢者が自主的に組織する社交の場がある。冒頭の公園活動はその一つだ。健康体操、スポーツ、麻雀などその分野は様々だ。こういったインフォーマルな要素は定年後の生活と切っても切れない関係にあり、高齢者の生活を支えている。多くがボランティアで成り立っているため、義務感が感じられず傍から見ていて楽しささえ感じる。
しかし一方でこういったあり方にも限界が出てきている。都市部である上海では一人っ子による家族の小型化が進み、親が健康なうちはよいとしても、身体障害などで自立生活ができなくなってしまった場合、子供にかかる負担は大きくなる。また、何らかの理由で子供がいなかったりするケースは更に深刻だ。

求められる介護システム

2012年の末で上海には84万6千人の純老人家庭(*)の高齢者がおり、その内、21万4千人ほど(約25%)が80歳以上の超高齢者となっている。独居老人家庭の高齢者は23万3千人(約6%)となっている。多くの場合、インフォーマルの限界を民間サービスが補っているが、このサービスを享受できるのは高所得者層に限られてしまう。急速に進む高齢化の問題を前に政府も2015年までに在宅介護サービスのカバー率を100%にとしているが、どれだけ進んでいるかは疑問の残るところだ。インフォーマルと民間の中間に、ホームヘルパーやデイケアなどの公的介護サービスの整備と人材育成の実現が待たれるといったところだろうか。
(*)60歳以上の老人しかいない家庭(複数世代、夫婦、独居)

出典

・上海市老齢科学研究中心
http://www.shrca.org.cn/43

・総務省統計局(日本)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001110276

・人民網
http://j.people.com.cn/94475/7670108.html

Marc Mizuno

中国上海市(在住歴8年)

情報誌制作

 
PAGETOP