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イギリスの住文化

山崎 恵美

株式会社日経リサーチ 国際調査本部 国際ソリューション第2部

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欧州・ロシア・CIS|英国|2013年06月03日

日本で流行している居住スタイルはイギリスでも親しまれている。「シェア」「リノベーション」「資産」という観点でイギリスにて人気である暮らし方や家との付き合い方をここで紹介しようと思う。

ハウスシェアのニーズ

不動産屋さんのウィンドウに掲示された賃貸広告

不動産屋さんのウィンドウに掲示された賃貸広告

久しぶりに帰国すると、いつのまにか日本でシェアハウスが流行していたことに驚いた。現在では新しい出会いや日々の交流を求めている人に向けて「シングルマザー専用シェアハウス」や「アロマセラピーが好きな人が集まるシェアハウス」などが提案されている。イギリスの住宅選択で主流であるのも、ハウスシェアやフラット(アパートまたはマンション)シェアである。イギリス滞在時、私自身4度引っ越しをしたが、4回とも誰かとシェアをしており、1人で暮らしたことはない。シェアをしていた理由は私の好みからではなく、住む選択肢において「シェア」は主流で一番安く住める方法だったためだ。現地にいる3年間スタジオフラット(ワンルームマンション)に1人で住んでいるという人に会ったのは数回しかなかったこともあり、シェアして住む人気の高さをうかがうことができる。イギリスでシェアするフラットや家を選ぶ際に重視するポイントは、家具付き、庭付き、家の広さ、光熱費込の家賃、バスルームの数などで、それによっては追加料金を支払う人もいる。日本も同じように、シェアの安さがウリとなっているが、一方で上記に述べたようなシェアメイトのタイプを限定しているハウスシェアが人気となっている。こういったハウスシェアはほとんどがワンルームマンションと同等の家賃であり、追加料金を払ってまでもシェアをすることに付加価値を感じる人々もいることが分かる。このように日本とイギリス両国でのハウスシェア人気の背景には異なるニーズが見てとれる。

リノベーションの本場であるイギリス

イギリスでよく目にするテラスドハウスの風景

イギリスでよく目にするテラスドハウスの風景

日本では、昨今の古民家人気や中古物件購入後のリノベーションが新築購入より手頃なことから年々中古物件を選ぶ人が増えてきている。対してイギリスでは、昔から新築をめったに建てず中古物件を購入し、独自にリノベーションを行うことが主流である。平成18年度の国土交通省の報告によると日本の新築物件と中古物件の比率は9:1、対してイギリスは1:9であり、日本とイギリスの違いがここでも見える。 イギリス人は古いものに価値を感じる人種からかもしれないが、中古物件の比率が圧倒的に高い理由の1つが家の造りにある。イギリスの多くの家の形式が隣の家と壁を共有しているセミディタッチドまたはテラスドハウス(第2次世界大戦後コストが安いため流行となった建築仕様)であるため、自分の家のみを建て直すということが難しい。そのほかにも土地の売買は稀であるなど中古物件文化には理由が多々あるようだ。

資産価値としての家

イギリスでは基本的に家を資産価値として捉えている。日本では1戸建てを購入するのは人生でだいたい1、2度だろう。対してイギリスでは何件かの家を乗り換え、1軒1軒丁寧にリノベーションを行い、家を買値より高く売ることでお金を貯めていく。そして最終的に老後に住みたい家を購入するという流れが一般的にある。私の知人に10年ほど前に中古物件を購入したイギリス人夫妻がいる。当時は間取りが古く住みにくい家だったそうだが、今ではインテリアマガジンの1ページにあるようなモダンなデコレーションがされ快適な家へと変貌を遂げた。彼らは一切住宅業者に頼らず、部屋と部屋を仕切っていた壁を壊し間取りを変え、新たにテラスを増築。家のデザインを現代のニーズに合うようにリノベーションを行い、今でも着々とカーペットからフローリングにするなど長い年月をかけて進行中である。最終的にはその家を売り、老後用の家の購入資金にすると聞いたとき、彼らが一生そこに住むから手間暇かけているのでは無いということを知って驚いた記憶がある。彼らはこの10年間、途中途中業者を呼び、今彼らの家の価値はどれくらいかと査定を繰り返している。もちろん皆がこの夫妻のように自力でリノベーションをしているわけではないが、家の価値を高めようと努力をしている人は多い。同時に、この夫妻のようにイギリスでは家族構成に合わせて家を住み替えていく人々が多い。まずは家族の規模に合わせて小さな家からはじめ、子供ができると部屋数のある家へと移っていき、最終的には老夫婦2人に十分なサイズの家に落ち着く。彼らにとって家は投資対象であり、リノベーションを楽しみながら人生の最後に最も理想的な家に住むための資金を貯めているといっても良いかもしれない。

出典

・国土交通省 住生活基本法の概要<平成18年6月8日公布>
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/singi/syakaishihon/bunkakai/14bunkakai/14bunka_sankou04.pdf

山崎 恵美

株式会社日経リサーチ 国際調査本部 国際ソリューション第2部

イギリス留学後、2013年に株式会社日経リサーチ入社

 
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