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690万にノー!

広末 暑子

シンガポール(在住歴6年)

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アジア・オセアニア|シンガポール|2013年03月25日

2013年1月、「6.9 Million」という数字がこの小さな島国を揺さぶった。この数字は政府が発表した2030年までに目指す総人口数である。少子高齢化による生産年齢人口の減少や労働力不足を移民を取り入れることで補い、経済成長を維持するのが狙いだ。この数字を含んだ新たな移民の大幅受け入れを柱とする「人口白書」は発表後議会で承認されたが、新人口政策に国民は反発し、与党内も異論が出るなど社会を揺るがしている。

とにかく増やす

ネットで出回っている新政策を揶揄する写真

ネットで出回っている新政策を揶揄する写真

以前にもここのコラムで紹介したシンガポールの人口構成だが、1.2という低い出生率と日本に劣らない高齢化問題を抱えるシンガポールはこれまで移民政策を進めてきた。10数年かけて総人口数は300万から530万にのぼり、そのうち外国人口が149万人、総人口の3割弱を占めることになった。だが、問題の根源である少子化は依然として改善ができず、高齢化現象を食い止めるのにはこれまでの政策を一段あげて現在530万人の総人口を約3割増の690万人に増やすしかないと政府は主張。新政策では総人口に占める永住者を含む外国人の割合が現在の38%から45%に増え、国民の比率は62%から55%に下がってしまう。

20年ぶりの集会

集会参加を呼び掛けるFacebookページ

集会参加を呼び掛けるFacebookページ

この発表を受け、国民の多くは移民の拡大で人口密度がさらにあがり、「仕事が奪われ、不動産価格の高騰を招く」「シンガポール人のアイデンティティーの喪失につながる」などと懸念している。すでに溢れている大陸本土からの中国人に対する嫌悪感と、金持ち外国人が自分たちよりもいい生活することに対する不満に、今回の発表が追い風となり国民の怒りを爆発させた。シンガポールは集会の制限が厳しく、唯一大衆の場で演説ができるのはHong Lim公園の「スピーカーズ・コーナー」。2月16日、白書の内容を反対する「Say No to 6.9 Million」集会がこの公園で開かれ、約3千人が参加した。「われわれの失業が増え、交通が渋滞する。本当にそこまでの人口・移民増が必要なのか」などと、政策について対話のなかったことや与党PAPの実利、官僚主義に批判が集中した。

反論する外国人たち

しかし一方、シンガポール在住の外国人も反論している。ネットの書き込みで「私たちは高度かつ専門的な技能を持つ外国人としてこの国の経済に貢献しています。こうやって政府に不満を言う暇があればもっと自分たちの専門性や能力に力を注いだらどうだ?競争力がないゆえにシンガポール人を雇わないことになぜ気がつかない?」などと。今後国民と外国人との間の溝がさらに広がりそうだ。

広末 暑子

シンガポール(在住歴6年)

 
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