トップ > プログラム > 世界の街角ライブラリー > 冷蔵庫の鍵穴に見るインド市場攻略法
伸びる電化製品需要
昭和30年代の日本の高度経済成長の時代、三種の神器と呼ばれていたのが、テレビ、洗濯機、冷蔵庫。今のインドの状況がそれだ。しかも、ブラウン管の白黒テレビではなく、いきなり薄型液晶テレビ、洗濯機は全自動、冷蔵庫も最新機能付きだ。また「三種」というケチなことは言わず、エアコン、パソコン、スマートフォンなどが同時進行で、インド人の生活を一気にアップグレードしている。
インドでは、総人口12億人の内、購買力のある中産層は約3億人。インドの合同商工会議所(ASSOCHAM)によると、インドの白物家電・生活家電市場の規模は、2011年で3,400億ルピーであり、年間平均15%で成長しているのだとか。

インドのグルガオンの電化製品売り場
家電ショップの冷蔵庫売り場
先日、デリー郊外、グルガオンの大型ショッピングモールに行ってみた。総合家電ショップが入っている。一見、日本で見るのと同じような雰囲気だが、目につくのは、LGやサムスンの韓国ブランドだ。
冷蔵庫は、韓国2社に加えて、アメリカのワールプール(Whirlpool)が入って、3社で市場の8割を占める。日本勢の商品もあるが、数は少ない。日本は白物家電というくらいで、白の商品が多いが、インドでは、黒や濃い色が目につく。インド国内の冷蔵庫の普及率はまだ19%だ(India Readership Survey 2012年のデータによる)。
冷蔵庫の扉に付いている鍵穴
冷蔵庫を見ていたら、扉に鍵穴がついているのを発見。現地駐在員に聞いてみたら、インドの冷蔵庫は、子供やメイドが勝手に開けないよう、ロック可能になっているのだとか。一カ所に鍵をかければ、冷凍庫のドアも同時にロックできるらしい。ドアの正面に付いているのもあれば、側面に付いているのもある。
ほとんどの冷蔵庫に鍵穴が付いている。しかし、日本ブランドの冷蔵庫にはそれがない!日本ブランドは、ローカル化が遅れていると言われているが、まさかその実例が、こんな所で見られるとは...
「冷蔵庫の鍵は消費者にとって重要?」と店員に尋ねてみた。「とても重要です。鍵はもはや当たり前の機能です」との答え。いくら先進機能が付いても、いくら品質がよくても、鍵がついていない冷蔵庫はインドでは売れない。そんな事実を知って、冷蔵庫だけに、肝を冷やす。
日本にいると、インドでこんなニーズが存在するとは想像もできない。インドの冷蔵庫は、ガラパゴス的進化を遂げているといえる。現地のニーズをきちんと把握し、それに対応できるかどうかが、インドでの成功の「鍵」になるのだろう。
出典
・インドの白物家電・生活家電市場の規模 (ASSOCHAM)
http://www.assocham.org/prels/shownews-archive.php?id=3458
・LG・インド冷蔵庫
http://www.lg.com/in/refrigerators/all-refrigerators
・サムスン・インド冷蔵庫
http://www.samsung.com/in/consumer/home-appliances/refrigerator/
・ワールプール・インド冷蔵庫
http://www.whirlpoolindia.com/refrigerator.php

岩本 文彦
広告代理店、株式会社ケー・アンド・エル
アジア・インド担当20年