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東カリマンタンへ、インドネシアの首都移転が決定 ~財源など課題山積み

中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴19年)

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アジア・オセアニア|インドネシア|2022年04月08日
ビルが林立するジャカルタの中心部

ビルが林立するジャカルタの中心部

 2022年1月18日、インドネシアの首都移転が国会で可決された。2019年にジョコ・ウィドド大統領が計画を公表していたもので、移転先は、現在の首都ジャカルタからジャワ海を越え北東へ約1200キロの東カリマンタン州(カリマンタン島東部)だ。新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済が回復しきれていない中、ジョコ大統領主導で首都移転プロジェクトが進み始めた。

新首都名は群島を意味する「ヌサンタラ」

新首都予定地の近郊にある地方都市サマリンドの町並み。奥に見えるのがマハカム川

新首都予定地の近郊にある地方都市サマリンドの町並み。奥に見えるのがマハカム川

 政府の発表によると、移転するのは政府機能のみで、2024年から約20年かけて2045年に完了する。新首都の名称は、ジャワ語で群島を意味する「ヌサンタラ」で、総面積は25万6142ヘクタール。移転理由はジャカルタの渋滞、洪水、地盤沈下、人口過密、政治・経済機能の極度な集中などだ。
 移転先は自然災害が少ないこと、インドネシア全国土の中央に位置すること、近郊にバリクパパンやサマリンダなどの地方都市がありインフラが比較的整っていること、広大な用地があることなどから、東カリマンタン州クタイカルタヌガラ県と北プナジャムパスル県の両県にまたがる地域が選ばれた。

自然破壊に懸念も

緑を多く取り入れた新首都のイメージ。資料提供:インドネシア公共事業・国民住宅省。Dok. Kementerian PUPR

緑を多く取り入れた新首都のイメージ。資料提供:インドネシア公共事業・国民住宅省。Dok. Kementerian PUPR

 カリマンタン島といえば、オランウータンなどの野生動物が住むジャングルがあり、開発による自然破壊が危惧されているが、政府は国民性の反映、社会的・経済的・環境的持続可能性の確保、スマートでモダンな国際標準都市の実現を掲げ、自然への影響を最小限に抑え、カリマンタンの森を維持するとしている。
 もう一つ、不安視されているのが移転費用だ。およそ466兆ルピア(約3兆7000億円)と試算されている費用の財源は19%が国家予算で、残りは官民連携事業及び民間資金となっている。コロナ下で国内の経済が未回復の中、政府は海外からの投資に期待を寄せている。しかし、一度は名乗りを上げたソフトバンクグループが投資を見送るなど、いきなり難航しているようにも見える。

お祭りムードはなく、人々は様子見の姿勢

 そして、何より興味深いのが、首都移転で一番影響がありそうなジャカルタ首都圏の市民や在留邦人の反応だ。首都移転といえば世界的にもまれな大プロジェクトで、国民をあげて成功を祈ったり、お祭りムードになったりするのかと思いきや、人々は意外なほど冷静だ。冷静である理由は移転のメリットに懐疑的であったり、途中で頓挫する可能性があると考えていたり、自分ごととして捉えられていなかったりなど、さまざまだ。
 実際、首都移転が決まっても、ジャカルタ首都圏では今もMRTやLRT、高速鉄道の工事が続いており、高層ビルも次々と建設されるなど、何もかもがこれまで通りだ。今後、移転プロジェクトの進行により何がどのように変わっていくのか、また、ジョコ大統領が果たして2024年8月の独立記念日式典を新首都で行えるのか、しっかりウオッチしていきたい。

新首都には、ガルーダを模した大統領宮殿が建設される予定だ。建築家ニョマン・ヌラルタ氏のインスタグラムより。@nyoman_nuarta

新首都には、ガルーダを模した大統領宮殿が建設される予定だ。建築家ニョマン・ヌラルタ氏のインスタグラムより。@nyoman_nuarta

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中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴19年)

月刊誌さらさ編集長

 
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