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文明を拒否する少数民族のコロナ問題~感染阻止へインドネシア政府躍起

中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴19年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|インドネシア|2022年02月21日
西ジャワの山間にあるバドゥイの村

西ジャワの山間にあるバドゥイの村

 インドネシアの首都ジャカルタから南西へ車で約5時間のチボレゲル村(Desa Ciboleger)。そこから徒歩で約1時間、アップダウンする急坂を進んだバンテン州の山奥に、バドゥイと呼ばれる場所がある。文明を拒否し、独自の文化を守りながら暮らすバドゥイ族の村だ。人口は約2万6000人。アミニズムを信仰する彼らは、16世紀にイスラム教がジャワ島に伝来した際、逃れて山間に移動したとされる。

電気、ガス、水道、携帯なしの生活

バドゥイの台所

バドゥイの台所

 文明を拒否する生活というのは、具体的に、電気もガスも水道もなく、もちろん携帯の電波も届かない生活を指す。今でも灯りは油のランプで、料理は薪で火を起こして作り、水は井戸と近くの川を利用する。洗濯、沐浴、トイレは基本的に川で行う。人々は農業、ハチミツ作り、織物・民芸品作りで生計を立て、学校や病院はない。

収穫したバナナを裸足で運ぶ外バドゥイの男性

収穫したバナナを裸足で運ぶ外バドゥイの男性

 バドゥイ村の内部は、外バドゥイ、内バドゥイに分かれている。外バドゥイの人は黒っぽい民族衣装を着ているので黒バドゥイとも呼ばれる。バドゥイの外の村や町との行き来がある程度認められており、中には普通のTシャツを着ている人もいる。世俗化した部分も見受けられ、民族のルールがどこまで適用されているのかは定かではない。外国人観光客も外バドゥイまでは入ることができ、民家に宿泊することもできる。一方の内バドゥイは、より厳格に民族のルールを守り、文明を拒否した暮らしをしており、外国人の入村は不可。白っぽい民族衣装を着ているので、白バドゥイとも呼ばれている。

現代医療を拒否、政府は部族長老を説得

 そのような生活を送るバドゥイ族のコロナ感染の状況はどうなっているのか。インドネシアでは2020年3月に最初の感染者が報告されたが、地元の報道によるとバドゥイでは2021年7月まで感染者が出ておらず、8月になって2名の陽性者が確認されたという。コロナ下で1年以上感染者が出なかった理由は、外部との交流を限定し、山中での生活を送っていることが挙げられる。現代医療を受け付けない種族のルール上、PCR検査を受けなかったため、感染者がいても確認が困難だったともいわれる。
 インドネシア保健省はこうした少数民族のコロナ問題を重視しており、2020年のうちにバドゥイ族の長老に対して新型コロナウイルスの危険性や感染防止の方法について説明した。同省のコメントによると、村人たちはその後、長老に従い、マスクを着用するなど感染防止対策に基づいた生活を送っているという。2021年9月からはバドゥイ族へのワクチン接種も始まっており、少数民族もコロナから守ろうというインドネシア政府の強い意思が感じられる。

素朴な家が並ぶ村の様子

素朴な家が並ぶ村の様子

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中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴19年)

月刊誌さらさ編集長

 
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