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ロンドン夏の地域型アートフェスティバル「E17 Art Trail」

峰松 愛

イギリス・ロンドン(在住歴23年)

プロフィール詳細

欧州・ロシア・CIS|英国|2021年09月07日

 コロナ下ながらも、ワクチン接種の推進でロックダウンの規制がほぼ解除された7月、筆者の住むロンドン北東部の町(郵便番号のエリアコードがE17)で恒例のアートフェスティバル「E17 Art Trail」が開催された。

2005年から続くE17の名物アートイベント

64ページのE17 Art Trail 2021ガイド

64ページのE17 Art Trail 2021ガイド

 Art Trailとは、開催地域在住・在勤のアーティストが自宅や制作スタジオで美術作品を展示公開するコミュニティーベースのアートフェスティバルで、見学者はTrailガイドを片手に見たい作品や興味のある会場を訪ね歩く。見学は無料。その魅力は、制作者に直接会って話を聞いたり作品を購入できたり、さらに制作現場や生活の場を目にできることだろう。出展者にとっては作品を公開できる貴重な機会となる。また、地域の交流の輪が広がり、新たなアートコラボが生まれるきっかけにもなっている。
 最初のE17 Art Trailは、2005年9月3日にE17のWalthamstowでアーティスト数十人が出展し、コミュニティーギャラリーやショップ、自宅など50会場で開催された。以後年々出展者が増え続け、今やロンドンの代表的なArt Trailとして知られるまでになった。近年は隔年の開催となり、2021年は7月1日~18日の会期で、Walthamstowを中心に隣接のBlackhorse RoadやWood Streetエリアを含む約200会場を多くの人々が訪れた。

(左上)街角に貼られた案内ポスター<br />
(右上)自宅の玄関前で展示販売のモザイクアーティストの会場。2人はコースター作りを体験中<br />
(左下)自宅前でスケッチしながら見学者を待つアーティスト<br />
(右下)所属アーティストたちが制作スタジオを公開していたBlackhorse Lane Studio

(左上)街角に貼られた案内ポスター
(右上)自宅の玄関前で展示販売のモザイクアーティストの会場。2人はコースター作りを体験中
(左下)自宅前でスケッチしながら見学者を待つアーティスト
(右下)所属アーティストたちが制作スタジオを公開していたBlackhorse Lane Studio

プロからアマチュアまで2500人が出品

グループ展会場のミニワークショップ

グループ展会場のミニワークショップ

 E17 Art Trail 2021のキャッチフレーズは"Possible Futures"(可能な未来)で、出品者数は2500人に上った。出展登録料はArt Trailガイドへの情報(公開日時や会場住所、作品説明と写真など)の掲載費として£60(約9000円/簡略出展料は£30)。実績あるアーティストやプロのクリエイターからアマチュア美術家まで多彩な人々が出展し、展示作品は絵画やイラスト、版画、彫刻、陶芸、工芸、写真、インスタレーション(展示空間全体を作品として使い、表現する芸術手法)、ビデオ作品や映画など実に多種多様だ。
 会期中は制作体験のできるワークショップやイベントも各所で開催されており、作品見学やワークショップへの参加に触発されて創作活動を始める人も多く、そうした人々がArt Trailへの新たな出展者になっているようだ。

ウィリアム・モリスゆかりの町がアートの町に

 E17 Art Trailが生まれた背景には、19世紀の家具・装飾デザイナーで「アーツ&クラフト運動」で知られるウィリアム・モリス(William Morris, 1834年-96年)が10代を過ごした屋敷がWalthamstowにあり、1950年以降William Morris Galleryとして町のランドマーク的な美術館になっていること、また、多くのアーティストを輩出した美術学校、Walthamstow School of Artがかつてあった影響も大きいと思われる。
 都心まで地下鉄で20~30分という地の利もあり、2005年以降はE17 Art Trailの発展とともにより多くのクリエイターがE17に集まってきているようで、Art Trailを見学する度に「なんと多くのクリエイティブな住人が近隣にいることか!」と毎回驚かされる。特に、Blackhorse Roadエリアには近年アートスタジオやワークショップスペースが増え、クリエイターたちの活発な活動拠点になっている。

コロナ下で屋外スペース利用者が増え、オンライン参加も

 コロナ下の2021年は、冬のロックダウン後の規制解除が段階的でまだ制約も残る中だったので、屋内を避けて玄関前の屋外スペースや庭を展示会場にしたり、自宅の窓を展示スペースに利用した出展者が例年以上に多かった。また、ウェブサイト上のオンライン展示に切り替えた例も目立ち、新たな展示スタイルを模索する参加者が多かったのが特徴だろう。

(左)自宅前で展示販売の陶芸家宅<br />
(右)ポップアートのウィンドウ展示

(左)自宅前で展示販売の陶芸家宅
(右)ポップアートのウィンドウ展示

 今回のArt Trailでは、冬場の長く厳しいロックダウンで人々との接触が限られていた後だけに、夏の好天にも恵まれて、あちこちの会場で多くの人々が対面で交流できる喜びを例年以上に味わったことだろう。長引くコロナ禍で在宅勤務者が増える中、地域に目を向け、地域を活性化させるような、こうしたイベントがさらに活発になっていくのではないだろうか。

※写真は執筆者が独自に撮影、または所有しているものです。記事の内容は執筆者の見解に基づくものです。

出典

・E17 Art Trailの公式サイト
https://e17arttrail.co.uk/

・E17 Art Trail 2021 (First Cut of the Festival Film)
https://www.youtube.com/watch?v=EUJ8Thslyd0

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峰松 愛

イギリス・ロンドン(在住歴23年)

東京で出版社勤務後、渡英。編集やライターの仕事の傍ら、ロンドンのオフィス街で日本語教師として活動。

 
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