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インドネシアのワクチン接種、宗教上の問題が浮上

中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴17年)

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アジア・オセアニア|インドネシア|2021年05月11日

 人口2億6700万人の87%あまりがイスラム教徒のインドネシア。国民の7割にワクチンを打ち、集団免疫を得ることを目標としており、接種対象者数は1.8億人いる。接種は1月から段階を分けてスタートし、5月9日時点で約860万人が2回目の接種を終えた。

アストラゼネカ製にはハラルの問題も

 インドネシアへのワクチン供給では、中国のシノバック社製や英国のアストラゼネカ社製などが既に到着している。しかし、アストラゼネカ製ワクチンは世界的に危惧されている血栓問題のほか、3月にワクチン製造の工程で豚由来の成分が含まれていることが判明し、ハラルの観点からイスラム教徒への接種の是非が問われる事態となった。こうしたことが問題になるのはイスラム教徒が多い国ならではあるが、結局これについては「イスラム教での緊急事態にあたる」などの理由からインドネシア・ウラマー評議会(ハラル認証機関)が使用可能と発表し一件落着した。

断食中の接種に議論

 そんな中、インドネシアのイスラム教徒は4月13日から、コロナ禍で迎える2度目の断食月に入った。感染が急速に拡大した時期での断食月だった昨年との違いは、国民へのワクチン接種が進む中で迎えた断食月だという点だろう。
 しかし、ワクチン接種がここでも問題になった。断食月中のワクチン接種の可否だ。1カ月にわたる断食月では、毎日夜明け前に飲食を済ませ、日没後に再び飲食する。飲食が禁じられている日中にワクチン接種で薬剤を体内に入れることが飲食にあたり、その日の断食が無効になるのではないかが懸念され、議論となった。だが、これについてもインドネシア・ウラマー評議会が「筋肉に注射するので飲食にはあたらない」とし、ワクチン接種は断食を妨げないとした。ただし、「接種後に万が一状態が悪化した際に薬を飲むなどしなければならないことを想定すると、夜間の接種が好ましい」との見解も出されており、イスラム教徒にとっての断食の重要性が改めて感じさせられた。

 一日の全国での感染者数が約1万2000人とピークだった1~2月に比べ、感染拡大のスピードは衰えを見せているとはいえ、まだまだ予断は許さない状況のインドネシア。断食期間中も政府の計画通りに接種が進み、感染拡大が収まっていくことを期待している。

出典

・外務省ホームページ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/data.html

・インドネシア保健省のツイッター
https://twitter.com/KemenkesRI

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中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴17年)

月刊誌さらさ編集長

 
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