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ロンドンV&A博物館で、欧州最大規模の着物展

峰松 愛

イギリス・ロンドン(在住歴23年)

プロフィール詳細

欧州・ロシア・CIS|英国|2021年01月14日
着物展入場口

着物展入場口

 コロナ禍で明け暮れた2020年。イギリスは3月中旬以降外出規制が続き、春と秋冬の全国ロックダウンで各地の博物館や美術館も6カ月の臨時休館を余儀なくされた。その合間を縫って開催されたのが、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の特別展「Kimono: Kyoto to Catwalk」だ。2月末に4カ月の予定で開幕後、1カ月足らずでV&Aは休館となったが、8月末に再開後は前売り入場券が10月末の最終日分まで早々に売り切れる人気で、筆者も終了間際に辛うじて当日券を入手して見学できた。

美術工芸・装飾品の宝庫、V&Aが企画

 今回の着物展を開催したV&A(1852年開館)は世界有数の芸術・美術工芸博物館で、服飾品や宝飾品のコレクションでも名高く、ファッション関係の常設展(入場無料)は特に人気があり、有料の特別企画展も毎回話題になる。今回の大掛かりな着物展(入場料16ポンド)も、着物や日本文化の愛好者はもちろんのこと、デザイナーなどファッション業界の人々の注目を大いに集める、興味深い展示内容だった。

(上段左)江戸時代の着物コーナー。花魁の見事な打掛や歌舞伎衣装も展示<br />
(上段右)1910~20年代ヨーロッパの着物風デザインの洋服<br />
(下段左)ミラー効果で鮮やかだった銘仙の着物コーナー<br />
(下段右)斬新な現代作品

(上段左)江戸時代の着物コーナー。花魁の見事な打掛や歌舞伎衣装も展示
(上段右)1910~20年代ヨーロッパの着物風デザインの洋服
(下段左)ミラー効果で鮮やかだった銘仙の着物コーナー
(下段右)斬新な現代作品

過去400年の着物の変遷と西洋服飾スタイルへの影響を概観できる展示

豪華なトップデザイナーの作品

豪華なトップデザイナーの作品

 2020年は東京国立博物館でも着物の特別展が開催されたそうだが、「京都からキャットウォーク(ファッションショーの舞台)へ 」と副題のついたV&A展は、従来の着物展と趣を異にし、江戸時代以降のファッションとしての着物の歴史や変遷とともに、西洋ファッションへの着物の影響にも焦点を当てたユニークな構成内容だった。

フレディ・マーキュリーの着物とマドンナ、ビョークの着物ドレス

フレディ・マーキュリーの着物とマドンナ、ビョークの着物ドレス

 内外から一堂に集められた300点もの作品は、1660年代から現代までの着物の数々と、着物に影響を受けた近代ヨーロッパの服飾品や日欧米の現代トップデザイナーのドレスなど。映画「スターウォーズ」の着物風衣装や、マドンナやビョークの斬新なドレスも展示され、話題を呼んだ。また、浮世絵や歴史的な絵画も展示に加えられ、なかなか見応えがあった。

オンラインセミナーやフォーラムも開催

多くの展示品の写真を収めた着物展の解説書(V&A Publishing)

多くの展示品の写真を収めた着物展の解説書(V&A Publishing)

 再公開後も入場制限や開館日の短縮(週4日に)で入場券の入手が難しくなり、V&Aではオンラインの展示案内イベント開催や、ギャラリーツアー動画のYouTube公開で対応。10月には日本大使館や国際交流基金ロンドンセンター主催の着物展関連のウェビナーもあった。V&A着物展キュレーターのアナ・ジャクソン氏と着物デザイナーの斉藤上太郎氏(V&A展で「霧の帝国」コレクションからの作品を出展)が対談した大使館主催のウェビナーは、特に人気を集めた。
 V&Aでは、2021年2月13日にオンラインフォーラム「The fashion for Kimono」を開催予定だ。深井晃子氏(京都服飾文化研究財団名誉キュレーター)のジャポニズムとファッションに関する基調講演や、誉田屋源兵衛(1738年創業の帯の老舗)の十代目山口源兵衛氏によるトーク、欧米の専門家によるセミナーなど丸一日の日程で、興味深いオンラインイベントになりそうだ。

 「着物とは無縁」と思われたロンドン郊外にある著者在住の町のウェディングドレス店で先日、着物の羽織をジャケット代わりにまとったショーウインドウのマネキンを見つけて驚いたが、これもV&A着物展の影響だろうか。同展に触発されたデザイナーの新作やブランド物が、今後きっと登場してくるにちがいない。

※写真は執筆者が独自に撮影、または所有しているものです。記事の内容は執筆者の見解に基づくものです。

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峰松 愛

イギリス・ロンドン(在住歴23年)

東京で出版社勤務後、渡英。編集やライターの仕事の傍ら、ロンドンのオフィス街で日本語教師として活動。

 
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