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コロナで様変わり、ジャカルタの断食模様

中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴17年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|インドネシア|2020年06月05日

 新型コロナウイルス感染拡大による大規模社会的規制が実施される中、今年もジャカルタのムスリムは4月24日から5月23日まで、イスラム教徒の義務である断食を行った。そして24日には断食明け大祭を迎えた。

通常の断食月と断食明け大祭の様子

 イスラムの断食は夜明け前に飲食をし、日の入り後に再び飲食をする。日が出ている間は一切の飲食、喫煙、感情・欲望を高ぶらせることが禁じられる(病人や妊婦などの飲食は可)。断食の目的は欲望に打ち勝ち、アッラーへの信仰心を高めることで、これを1カ月続けるので苦行ではあるが、ムスリムたちは互いに励ましあって乗り切る。
 例えば、夜明け前(2時半から3時ごろ)には町内会の若者がドラを鳴らしながら「サウール、サウール(断食期間中の朝食の意味)」と練り歩き、皆が朝ごはんを食べそびれないように促す。また、一日の断食明けにはモスクで礼拝したり、会社の同僚同士、また各コミュニティーで集まり、断食明けの食事をともにしたりする。モスクでの礼拝は普段は男性だけだが、断食期間中のみ女性もモスクで礼拝する。
 断食明けの食事は「ブカブルサマ」と呼ばれ、年に一度の同窓会を兼ねて集まるなど、ムスリム自身が工夫を凝らし、断食期間を楽しもうという様子が見受けられる。さらに、断食明け大祭が近づくと、食材や当日に着用する新しい服の買い出しのため、市場やスーパーが大混雑になる。
 断食明け大祭当日の朝は男女ともモスクに集まり礼拝をし、近所や親戚回りをして食事をしたりして断食明けを祝う。ジャカルタ在住のムスリムの多くは地元に帰省するため、断食明け大祭前後は帰省ラッシュで飛行機や電車のチケットは早々に売り切れ、道路は大渋滞となる。これは日本のお盆や正月と似たような感じだ。

モスクでの集団礼拝、帰省も禁止

 今年はコロナウイルス感染拡大のため、断食を予定通り実施するのかという意見も当初あった。断食をすると生活のリズムが普段と変わり、睡眠不足で体調不良になる人も出るからだ。しかし、ムスリムは「こんな時こそ断食を行わなくては」と思ったようで、筆者の周りのムスリムに断食をするのか尋ねると、「もちろんやる」との回答だった。
 こうして断食は予定通り行われたが、規制により外出自粛となった。飲食店はデリバリーのみの営業に切り替えるところがほとんどで、モスクでの集団礼拝や帰省も禁止された。「サウール」の呼びかけは例年通りだったが、断食明けの毎晩の礼拝や「ブカブルサマ」は行われず、各自自宅で断食明けの食事を取ることになった。 
 筆者が所属しているジャワガムランのコミュニティーでも毎年必ず「ブカブルサマ」のイベントを行い、仲間内で集まって演奏したり食事をともにしたりして楽しんでいたのだが、これも中止となった。

断食明け用の飲食物を売る露店。近所の人が買い物に訪れていたが、数は多くはない

断食明け用の飲食物を売る露店。近所の人が買い物に訪れていたが、数は多くはない

多くの人で込み合う駅や空港

 一方、帰省と断食明け大祭当日の礼拝については、人や地域により対応が異なる結果となった。帰省に関しては田舎の親が病気であるなど、正当な理由がある場合はその旨を記した政府発行のレターが必要ということになっていたが、なぜか駅や空港には大勢の人が詰めかけ、通常の年と変わらないような風景も報道された。
 食材や衣服を買い求める人で市場も大混雑となり、通路は人でいっぱいになった。みんなでやれば怖くないという心理が働いたと考えられる。断食明け大祭当日の礼拝は地域ごとの判断となったようで、グリーンゾーンと呼ばれる感染者が比較的少ない地域ではモスクでの礼拝が行われたようだ。

 大半の人は外出自粛や帰省禁止に協力しており、一部の人々による断食明け大祭直前の駅や空港、市場での混雑ぶりが悪い結果を招かないように祈るばかりだ。

※ 写真は執筆者が独自に撮影、または所有しているものです。記事の内容は執筆者の見解に基づくものです。

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中野 千恵子

インドネシア・ジャカルタ(在住歴17年)

月刊誌さらさ編集長

 
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