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ミャンマー庶民の味方、伝統生薬の品質向上へ日本も貢献

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|ミャンマー|2020年05月25日

 ミャンマーでは民間生薬の利用が盛んだ。2016年まで長く続いた経済封鎖の影響もあってか、西洋医療と並行して伝統医療が根強く残り、民間生薬の普及率も非常に高い。もっとも、安全面や野生動物保護などの点で課題も多い。政府は健全な市場育成に向け取り組みを強化している。

ミャンマー中部のインレー湖畔に立つ朝市の薬屋。ほとんどが民間生薬

ミャンマー中部のインレー湖畔に立つ朝市の薬屋。ほとんどが民間生薬

絶滅危惧種動物の利用や違法薬、偽薬も蔓延

祭りの屋台では野生動物由来の生薬が売られている

祭りの屋台では野生動物由来の生薬が売られている

 ミャンマーでは土着信仰に深く帰依する人びとが集まる聖地の参道や、伝統的な祭りの屋台街に伝統生薬の売る店が多い。そうした店では、町にある民間生薬の薬局に比べ、絶滅危惧種であるセンザンコウや鹿などの野生動物由来の薬が目につく。
 2020年4月2日付け現地紙「ザ・ミャンマー・タイムズ」は、聖地チャイティヨーにある民間生薬市場への潜入レポを掲載した。それによると、捕獲が禁じられているツキノワグマの手を10万チャット(約7550円)、虎の犬歯を4万チャット(約3020円)で販売しているほか、押し売りに近い手法で薬を売りつけていたという。

都市部でも民間生薬が一般的

ミャンマー語表記の民間生薬。パッケージはユニークなものが多い

ミャンマー語表記の民間生薬。パッケージはユニークなものが多い

 野生動物由来の民間生薬には違法なものや効力に疑問符が付くものも多いが、多くの人が薬局で購入する民間生薬は、基本的には合法的なものだ。地方の市場だとほとんどすべての薬が民間生薬で、地方都市の薬局だと店頭商品の約半数、最大都市ヤンゴンでも2~3割を民間生薬が占めている。
 民間生薬が広く利用されている理由は第一に安いこと、そして飲み慣れていること、さらには用法がミャンマー語で書かれていることが大きいようだ。ミャンマー都市部で多く流通している西洋医学の薬はインド製が多く、使用法などは英語で書かれている。

 

ヤンゴンの薬局。ここは民間生薬の方が西洋医学薬よりも多い

ヤンゴンの薬局。ここは民間生薬の方が西洋医学薬よりも多い

JICAや日本財団も支援

 民間生薬を処方する伝統医療病院やクリニックも、国立を含め多数ある。しかし、きちんとした知識を伴わないまま診療する治療院が後を絶たないため、政府は2001年、マンダレーに伝統医療大学を設立し、伝統医療を専門とする医師の育成に取り組んでいる。地元誌「ミャンマーインサイダー」によれば2015年の時点で、ミャンマー国内の伝統医療病院は14、同診療所は237、登録された9000人以上の伝統医療関係者のうち学位取得者は1612人となっている。

 こうしたミャンマー政府の取り組みを日本も支援。国際協力事業団(JICA)は2001年に着手した薬草園事業をはじめ、複数の伝統医薬に関するプロジェクトを支援してきた。さらに日本財団も、同様のプロジェクトに助成金を出している。
 広大な山岳地帯を有するミャンマーで民間生薬の研究が進めば、将来は生薬を輸出産業に育てることも可能かもしれない。まずは国内の体制を整えることが急務といえる。

※ 写真・動画は執筆者が独自に撮影、または所有しているものです。また、記事の内容は執筆者の見解に基づくものです。

出典

・The Myanmar Times - Wildlife market
https://www.mmtimes.com/news/wildlife-market.html

・Myanmar Insider - A Glance at Traditional Medicine in Myanmar
https://www.myanmarinsider.com/a-glance-at-traditional-medicine-in-myanmar/

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板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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