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内需に期待、ヤンゴンでメロンフェスティバル~コロナ禍で中国需要激減

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|ミャンマー|2020年03月18日
メロンフェスティバルの会場。スイカやメロンが山積みで売られている

メロンフェスティバルの会場。スイカやメロンが山積みで売られている

 週末を挟む2月29日から3月4日までの期間、ヤンゴン中心部の公園で「第1回メロンフェスティバル」が開かれた。産地直送のスイカやメロンを売る屋台を中心に数十軒が出店し、フルーツカービングの実演や早食い競争などのイベントを実施。その様子はテレビニュースなどで大きく取り上げられた。実際のところ、集客は今ひとつだったのだが、それは事前の宣伝が足りなかったからだろう。というのもこのイベントは、新型コロナウイルスの影響により、スイカやメロンを中国へ出荷できなくなった農家に対し、政府が用意した支援策のひとつとして急遽開催が決定したイベントだったからだ。

中国との国境貿易ストップ

 2020年3月16日時点で、ミャンマーではコロナウイルス感染者は出ていない。しかし、中国への依存度が高いこともあって、経済的損失は計り知れない事態に陥っている。中国と国境を接するミャンマー東北部には、ムセ、チンシュエホー、ルウェジェ、カンピケッティの4カ所の国境貿易ゾーンがあり、地元のニュース月刊誌The Irrawaddyによると、これらのエリアでの貿易取引額は1日平均1000万~1400万USドル(約10億~15億円)あったのに対し、2月下旬の時点で100万~200万USドル(約1億~2億円)まで急落してしまったという。

 中国・武漢におけるコロナウイルスの深刻な状況が報道され始めてから、最初に大きな動きがあったのは中国側からだった。今年の春節休暇は1月24日から30日で、例年この期間の中国とミャンマーの国境貿易は停滞する。ここまでは、国境貿易のトレーダーたちにとっては織り込み済だった。しかし、休暇明け直前の1月27日、コロナウイルスの感染防止を理由に、中国側がミャンマー国境から中国全土への輸送ルートに制限をかけたため、実質的に取引が停止。春節明けの取引再開を待っていた大量の輸送トラックは、農産物や海産物を山積みにしたまま、国境で立ち往生することになった。

最盛期のスイカ・メロンを直撃

スイカを販売するヤンゴン市内の露店

スイカを販売するヤンゴン市内の露店

 生産品の中で特に大きな影響を受けたのはスイカやメロン、バナナ、魚介類で、これらだけでも年間数億USドルの取引が灰燼に帰したと、地元誌Frontierが報じている。さらに、ミャンマー全土には中国人がミャンマー人から土地を借り受けて運営している農場が多く存在するのだが、その農場の中国人オーナーや技術者が帰国したまま戻って来ず、農場労働者に給与が支払われないというトラブルも起こっている。

 特にスイカやメロンは、間の悪いことに、この時期から5月にかけてが収穫のピークを迎える。農産物のバイヤーたちは国境ゲートのある省に住んでいるが、移動制限によって他省に商品を売ることができないため取引にならない。国境のバイヤーを介さないオンライン経由の取引で、中国のスーパーマーケット向けにハニーデューメロンがトラック40台分輸出されていったという話もあるが、焼け石に水の状態だ。

ヤンゴン最大の青果青物市場ティリミンガラーに並ぶスイカ

ヤンゴン最大の青果青物市場ティリミンガラーに並ぶスイカ

 今回の事態に陥る前、スイカとメロンは1トンあたり約4000人民元(約6万円)、トラック約600台分が毎日取引されていた。それに対し、国内向けは微々たるものだ。ヤンゴン最大の青果卸売市場であるティリミンガラーでさえ需要は1日トラック10台分程度で、余剰となってしまったスイカやメロンをとうてい消費しきれない。2月7日付の地元紙Global New Light of Myanmarは、かつてトラック1台分のスイカが4万元(約60万円)だったのに対し、2月初旬の時点で7000元(約10万円)まで下がったと報じている。
 中国以外でミャンマー産スイカの需要があるのはシンガポールぐらいだが、量は年間にしてせいぜいコンテナ3、4個だ。その他の国へとなると、輸送コストもさることながら輸入基準の厳しさもあり、業界関係者には実現に否定的な意見が多い。

中国依存度引き下げの好機?

スイカのオブジェ前で記念撮影。メロンフェスティバルにて

スイカのオブジェ前で記念撮影。メロンフェスティバルにて

 そこで政府はヤンゴン市に協力を仰ぎ、スイカやメロンを大都市ヤンゴンで販売する方法を模索。ヤンゴンの市場や祭りでの販売、市内での店舗の展開、ネットを活用した個別販売など、様々な対策を検討しており、メロンフェスティバルもそうした支援策の一環だった。

 このような経緯で、緊急措置として開催されたメロンフェスティバルだが、フェスティバル名は「第1回」と銘打っている。来年以降、このフェスティバルを拡大させ、スイカやメロンの新しい販路を作れるのか。今回のコロナ禍が、中国依存度が高かった農産物分野のターニングポイントとなることを強く期待したい。

※ 写真・動画は執筆者が独自に撮影したもの、または所有しているものです。また、記事の内容は執筆者の見解に基づくものです。

出典

・Melon sales most affected following coronavirus outbreak in China
https://elevenmyanmar.com/news/melon-sales-most-affected-following-coronavirus-outbreak-in-china

・The cost of the coronavirus to Myanmar’s economy
https://www.frontiermyanmar.net/en/the-cost-of-the-coronavirus-to-myanmars-economy

・China coronavirus: Watermelon, muskmelon exports plunge, prices drop by half
https://www.globalnewlightofmyanmar.com/china-coronavirus-watermelon-muskmelon-exports-plunge-prices-drop-by-half/

関連ページ

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板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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