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外遊びに飢える日本人子女~大気汚染が深刻化するデリー

水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴12年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|インド|2020年03月12日

 大気汚染の度合いをはかる指標のひとつに「AQI(空気質指数)」がある。AQIはオゾン、PM10、PM2.5、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素の値の計測結果により算出される。
 AQIの汚染度合いの目安は以下の通りである。

 0~50:良い
 51~100:中程度
 101~150:一部の層にとって健康に悪い
 151~200:健康に悪い
 201~300:非常に健康に悪い
 301~500:危険

福岡の大気のAQI(左)と東京(右)

福岡の大気のAQI(左)と東京(右)

 2019年11月3日、世界各地のAQIを検索してみた。筆者の故郷、福岡のAQIは65だった。「中程度」だ。東京都新宿区は53。こちらも「中程度」である。

バンコクの大気のAQI(左)と北京(右)

バンコクの大気のAQI(左)と北京(右)

 タイ・バンコクは72で、これも「中程度」だ。しかし、2019年1月22日の西日本新聞によれば、バンコクではAQIが183という「健康に悪い」レベルに達したことがあるという。ニュースの見出しには「大気汚染深刻」と書かれていた。中国・北京は95で、「中程度」でだった。ただし、過去のニュースを見ると、一時的にAQIが500を超えて測定不能になったこともあるという。

デリーは「測定不能」

デリーの大気のAQI

デリーの大気のAQI

 ではインド・デリーはどうか。右にあるように、振り切れている。冗談のようだが、これがデリーの冬を数値的に表したものだ。

 常夏のイメージがあるインドだが、デリーの冬は寒い。2019年12月の最低気温はセ氏3度を切った。この時期にデリーの大気汚染は深刻化する。空に青みがかった色が見えることはほとんどない。まれにうっすら青白い色が見えたかと思ったら、すぐに消え去ってしまう。

スモッグに覆われるデリーの空

スモッグに覆われるデリーの空

 厳しい環境下、日本人や欧米人が自国民のために主催する屋外イベントはいつ行われるのか。答えは11月末から12月頭。大気汚染がもっともひどくなる時期だ。「なぜ、わざわざそんなときにイベントを行うのか。冬が終わるのを待てばいいだろう」と思われるかもしれない。しかし、冬が終わってごく短い春を過ぎると、次に待っているのは酷暑期である。40度超えは当たり前、50度前後まで上がることもある。「では酷暑期が終わってから」と思われるかもしれない。確かに酷暑期が終われば、33~38度ぐらいまで気温は下がる。しかし、代わりに雨が降り始める。

日本大使館は外出手控えを要請

デリーフリマのパンフレットの一部。大気汚染対策マスクの展示販売も

デリーフリマのパンフレットの一部。大気汚染対策マスクの展示販売も

 2019年11月末、デリーの日本人社会で恒例行事となっている「デリーフリマ」という屋外イベントが開催された。11月といえば、初旬のAQI「999振り切れ事件」のあと、たまに350ぐらいまで落ちて「空気がきれいになった」と喜んでいたらまた上昇して、また少し落ちてまた上がって、ということを繰り返していた時期だった。在インド日本国大使館も「不要不急の外出を控えることを検討すべし」との連絡を在留邦人に回した。

 そうしたなかでのイベント開催だから、「客足は鈍るだろう」と考えていた。しかし結果は逆だった。
 大気汚染のひどかったこの年に、入場人数は過去最高の1450人に上った。多くの来場者が開場時間中を目いっぱい使って会場に居続け、まだ遊ぶとぐずる子どもを引きずって帰る保護者も散見された。
 デリーでは治安上の問題などから、日本人が子どもを外で駆け回らせて遊ばせるのはなかなか難しい。子ども連れで赴任している在留邦人の保護者たちは子どもたちに「外で遊ぶ」経験をしてほしいと切に願いつつも、なかなかその機会が得られない。その思いから、大気汚染がひどいことを知りつつも、子どもを思い切り駆け回らせるために来場したのだろう。

たくさんの子どもたちでにぎわうステージ前(左)と、<br />
芝生の広場では皆が思い思いに過ごしている(右)

たくさんの子どもたちでにぎわうステージ前(左)と、
芝生の広場では皆が思い思いに過ごしている(右)

 デリー政府は不定期に車の「偶数・奇数ナンバー規制」(偶数日には偶数ナンバーしか走れず、奇数日には奇数ナンバーしか走れない規制)を行ったり、各家庭における発電機の使用を禁止したりしている。しかし、車のナンバー規制は「金持ちが2台買う結果に終わっただけ」と冷ややかに見る向きもあるし、発電機もこれまでと変わらず使い続けられている。デリーの冬の空が美しい青に染まる日は来るのだろうか。

※ 写真・動画は執筆者が独自に撮影したもの、または所有しているものです。また、記事の内容は執筆者の見解に基づくものです。

出典

・Real-time Air Quality Index (AQI)
https://aqicn.org/city/delhi/r.k.-puram/

・バンコク消えた青空(西日本新聞、2019/1/22 6:00)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/480924/

・中国:深刻な大気汚染が続く北京(NPO法人 海外安全・危機管理の会、2014/2/27)
https://oscma.org/2014/02/27/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%ef%bc%9a%e6%b7%b1%e5%88%bb%e3%81%aa%e5%a4%a7%e6%b0%97%e6%b1%9a%e6%9f%93%e3%81%8c%e7%b6%9a%e3%81%8f%e5%8c%97%e4%ba%ac/

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水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴12年)

不動産仲介やイベント運営など日本人サポート業務を主に行う

 
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