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ミャンマーで巨大ブックフェア開催、検閲時代の終焉象徴

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|ミャンマー|2020年03月09日
ビッグバッドウルフの広大な売り場

ビッグバッドウルフの広大な売り場

 ミャンマー最大都市ヤンゴン郊外の見本市会場ミャンマーエキスポホールで、1月10日~20日ブックフェア「ビッグバッドウルフ」が開かれた。ミャンマーでは昨年1月にヤンゴンで初めて開催され、同年6月には第2回をミャンマー第2の都市マンダレーで開いた。今回は3回目となる。

洋書100万冊の品揃え

真新しい洋書が山積みの会場内

真新しい洋書が山積みの会場内

 「ビッグバッドウルフ」は2009年にマレーシアで始まった世界最大級の書籍販売会で、これまで台湾やタイ、フィリピン、インドネシア、スリランカ、パキスタン、アラブ首長国連邦などで開かれてきた。

 今回、体育館を思わせる広大な売り場に集められた書籍は約100万冊。山積みになった本が成すいくつものシマが整然と並び、それぞれに「料理」「旅行」「歴史」「ロマンス」「建築」「絵本」「少年少女向け小説」といったジャンルを示す札が立てられている。とくに充実しているのは子ども向けの絵本や事典。少ない数の子どもを丁寧に育てようとする都市部のミャンマー人家庭の教育熱心さが影響しているのだろう。
 会場の一画にはミャンマー語本のコーナーも設けてあるが、ほとんどが洋書。ミャンマーは旧イギリス領だったこともあり、中流階級以上であれば英語での読書に困らない人が多いのだ。

 価格もリーズナブルで、真新しい新刊洋書が50~90%引きで売られており、日本で買うのに比べれば格段に安い。通路には大きなカートにどんどん本を入れながら進む客が行き交い、何台ものレジが並ぶ精算所には長蛇の列ができていた。しかも驚くことに、営業時間は夜中の12時まで。最後まで客足は絶えなかった。

古本を大切にする文化、今も根強く

古本屋の店先では、古本の表紙の補強作業中だった

古本屋の店先では、古本の表紙の補強作業中だった

 ミャンマーではほんの数年前まで検閲が厳しく、洋書もほとんど入ってこない時代が長く続いた。当時、海外の文化事情に関心のある人が海外で出版された雑誌や洋書を手に入れる方法は、在留外国人の家庭や職場から出される古雑誌・古本を探すしかなかった。
 ビルマ語の書籍についても、新しく印刷されるものは少なく、古本を丁寧に繕って読み継いできた。検閲の廃止は2012年なので、さほど昔のことではない。古本を大切にする習慣は今も根強く、ダウンタウンのパンソダン通りからセイカッタン通りにかけての古書店街では、製本が崩れた本を針と糸で繕う様子が店先で多く見られる。

ダウンタウンにある古書店街

ダウンタウンにある古書店街

 本が手に入りにくかった時代は貸本屋も盛況だった。2014年頃まで、ヤンゴンには数多くの貸本店が存在したが、今やそれらは数えるほどしか残っていない。
 検閲時代の悪しき習慣として残っているものに、コピー本の存在がある。原本から全ページをコピーした本は黙認され、それらが原本とさほど変わらない値段で売られているのには驚く。

 それにしても、ほんの数年前までの洋書へのアクセスの難しさを考えると、今回の販売会に並ぶ膨大な数の洋書の山には隔世の感を禁じ得ない。誰もが自由に、どこの国の本でも読める時代がこのままずっと続くことを願ってやまない。

※ 写真・動画は執筆者が独自に撮影したもの、または所有しているものです。また、記事の内容は執筆者の見解に基づくものです。

出典

・Big Bad Wolf Books
https://bigbadwolfbooks.com

・Ardent book lovers visit The Big Bad Wolf book sale
https://www.globalnewlightofmyanmar.com/ardent-book-lovers-visit-the-big-bad-wolf-book-sale/

関連ページ

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板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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