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宙に浮くヤンゴンの“バス改革“

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

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アジア・オセアニア|ミャンマー|2020年01月22日

 ミャンマー最大の都市ヤンゴンで、市民の足であるバスをめぐる話題がにぎやかだ。地元紙The Global New Light Of Myanmarは昨年12月8日、ヤンゴン管区交通局のウーラーアウン局長がヤンゴンの路線バスにプリペイドカードでの運賃支払いシステムを導入する、という旨の発言をしたと報じた。

釣り銭を他の乗客から集める珍システム

夕暮れ時に混み合う繁華街のバス停

夕暮れ時に混み合う繁華街のバス停

 地下鉄やモノレールといった公共の大量輸送機関が整備されておらず、バイクや自転車の利用も原則的に禁止されているヤンゴンの市民の足はもっぱら路線バスだ。かつてヤンゴンの路線バスは当局の統制が効いておらず、ボロボロの車体で危険運転を繰り返していたが、2017年に統廃合して路線も整理統合。現在では基準を満たした4600台のバスが133の路線を走っている。

 統廃合に際してそれまでいた車掌が消えてワンマンバス方式になったが、問題となったのが釣り銭だった。運賃投入箱が機械化しておらず運転手も釣り銭を用意していないため、釣り銭が必要な乗客は自力で他の乗客から釣り銭分のお金を集めるという、世界的にもかなり珍しい光景が繰り広げられている。

 当局は当初、「数カ月内にはプリペイドカード方式にするので、それまでの暫定的措置」と発表していた。しかし、ワンマンバス化から既に3年たつが、いまだ乗客たちはアナログな相互扶助で釣り銭問題の解決にあたっている。その間、「来月にはプリペイドシステムを導入する」「今月中にはなる」という発表は何度もあった。今回の発表が今度こそオオカミ少年脱却となるか、成り行きが注目される。

キオスク設置計画に反発相次ぐ

 こうしたプリペイド問題と関連して、路線バスをめぐる別の問題も発生している。それは、バス停にキオスクを設けようというヤンゴン市の計画だ。
 市の言い分としては、プリペイド方式が導入された暁には、カードをチャージできる売店がバス停付近に必要になる。そこでカードだけでなくドリンクや雑貨なども売るキオスクを設置して民間に貸し、利益を得ようというのだ。計画では、乗降客の多いバス停横に1軒当たり約200万チャット(約14万円)かけて約2.3㎡のキオスクを設置することになっていた。しかし、市民や議会から強く反発する声があがった。

バス停に出店する露店

バス停に出店する露店

 ひとつには、ただでさえひどい交通渋滞と違法駐車で危険極まりない現在のヤンゴンの道路脇にキオスクを設ければ、歩行者がさらに危険にさらされる可能性が高いことだ。
 もうひとつは、既存の露店に関してだ。現在、バス停の周りには多くの露店が乗降客目当てに小商いを営んでいるが、ヤンゴン市はここ数年、渋滞緩和を理由に、無許可店には罰金を科して排除に努め、許可をとって税金を払っている店にもバス停から少し離れた場所へ移動させたりしてきた。それなのに市がキオスクを設置して、民間から店賃を徴収しようとすることへの反発だ。

モデルキオスクはシャッターを閉じたまま

試験的に設けられたバス停のキオスク

試験的に設けられたバス停のキオスク

 市民による反発の声の高まりに市長はいったん計画を中止したが、すでにいくつかのバス停にはモデル店が設置済みで、現在それらはシャッターが下りたままの状態が続いている。
 プリペイドカードが今度こそ稼働を始めた場合、これらの問題は再燃する可能性が高い。再燃しなかったとしても、今度はどこでプリペイドカードを販売するのか、という問題が起こりそうだ。その前にまずは、ヤンゴン交通局の“オオカミ少年脱却”を待つ必要があるのだが。

出典

・In Myanmar’s Commercial Capital, Mayor’s Sidewalk Store Plan Draws Criticism
https://www.irrawaddy.com/news/burma/myanmars-commercial-capital-mayors-sidewalk-store-plan-draws-criticism.html

・Yangon Bus card payment systems to be installed on buses this month
https://www.globalnewlightofmyanmar.com/yangon-bus-card-payment-systems-to-be-installed-on-buses-this-month/

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https://gmc.nikkei-r.co.jp/stat_area/?search_ext_col_01=01&topics_ext_options_search=1#area294

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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