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プノンペン、2020年も計画停電の見通し

多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|カンボジア|2020年01月15日

 カンボジアが最も暑いシーズンは3~5月で、酷暑期と呼ばれている。連日の日照りに加え、半年間にわたる乾季の終わりでもあるため国中が乾ききり、赤土が埃となって宙に舞い、地上の民家や木々、草木や牛、人まで、ありとあらゆるものに降り注ぐ。そんな2019年の酷暑期、プノンペンの住民や企業は地獄の暑さの中でさらにつらい経験をすることとなった。なんと気温40℃の最中に、政府主導で連日、計画停電が行われたのだ。

乾季のカンボジアの農村風景

乾季のカンボジアの農村風景

乾季に干上がる水力発電所続出

 カンボジアはエネルギーインフラ後進国だ。国内では火力と水力発電を行っているが、その発電量は国内使用量を賄えるレベルではなく、近隣諸国から電力輸入を行っている。そのため近隣諸国に比べると電気代は割高だ。バンコクの電気料金は0.12US$/kWh(約14円)、ベトナムの家庭用電気料金(※)は0.08US$/kWh(約9円)であるのに対し、プノンペンは0.15US$/kWh(約17円)となっている。

 国内の発電量のうち、およそ半分は水力によって発電されている。カンボジアの国土のほとんどが平野なので、高低差が十分あり水量の多い河川が国内のどこにもなく、安定して発電を行える水力発電施設がない。そのため雨が降り続ける雨季と、雨がほぼ降らない乾季の発電量には大きく差があり、少雨で川やダムの貯水がなくなれば発電能力が劇的に低下する。これが、2019年に首都で3か月にわたって計画停電せざるを得なくなった原因となった。

停電特需で発電機の価格が急騰

家庭用発電機は日本のデンヨー(Denyo)社製が人気

家庭用発電機は日本のデンヨー(Denyo)社製が人気

 カンボジアではもともと、送電網が壊れたり、たまに政治的な理由で送電量を減らされたりしてきた。街中の大型商業施設の多くは発電機を備えており、停電が発生した場合は自動的に切り替わるようになっている。しかし、それは住居や小規模な商業施設にはない。そのため2019年の計画停電時には日中に電気が使用できなくなり、街中で電気難民になる人が続出した。

 その結果、小型の発電機の価格が急上昇した。政府が計画停電を発表した当初、皆「まさか」と思っていたが、いざ停電が始まり、本当にそれが連日続くと、もはや人類が電気無しで生活することが不可能であることを、身をもって体験させられることとなった。40℃の猛烈な暑さで、インターネットが使用できないオフィスは、もはや事業活動の場ではない。初めのうちは近くのカフェで仕事をしていればよいと思ったが、停電時間があまりに長く、カフェにも申し訳ないし(他にも同じような客が大勢いたが)、プリンターなどのPC周辺機器が使用できないため全然仕事にならないことが分かった。最終的にオフィスで発電機を購入した時には、すでに市場では需要と供給のバランスが取れなくなっており、価格は定価の倍以上になっていた。

政府は早くも2020年の計画停電を発表

 カンボジアではすでに乾季が始まっている。朝晩は10℃台後半まで気温が下がり、日本人にとっては過ごしやすい日々が続いている。しかしフン・セン首相は、昨年11月に早くも「2020年も計画停電を実施するかもしれない」と発表した。どうも2019年は少雨気味で、貯水量が全く足りないようだ。火力発電所の建設や、各国からの送電量の交渉など、自らの政策を発表する一方、個人商店や家庭にも発電機の設置を呼び掛けていることから、どうもあまり自信がないようだ。2020年の計画停電は2019年に増してひどくなりそうな予感がする、プノンペンの今日この頃である。

※プリペイドカードメーターの場合

出典

・Power shortages again in dry season, says prime minister
https://www.phnompenhpost.com/business/power-shortages-again-dry-season-says-prime-minister

・Hun Sen says water levels may cause power cuts in capital
https://www.khmertimeskh.com/658075/hun-sen-says-water-levels-may-cause-power-cuts-in-capital/

・カンボジア、電力不足で計画停電 乾期の暑さで水力発電に影響
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/190325/mcb1903250500001-n3.htm

・電気料金を8.36%引き上げ、電力事業の赤字改善へ(ベトナム)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/03/00e24c6f06374977.html

・UTILITY COST
http://www.cambodiainvestment.gov.kh/why-invest-in-cambodia/investment-enviroment/cost-of-doing-business/utility-cost.html

関連ページ

・変わるカンボジアの農業、富裕層が参入
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=1113

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多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

カンボジア発の季刊カルチャー誌「クロマーマガジン」編集長

 
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