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米ニューヨーク、超高層ビルの建設ラッシュで変わる景色

坂下 曜子

アメリカ・ニューヨーク 在住歴2年

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北中南米|米国|2019年11月08日

 米ニューヨーク・マンハッタンの代名詞とも言える摩天楼。そこに「超」が付く高層ビルが続々と誕生している。米景気の拡大が過去最長を記録する中、不動産市場にマネーが流入。マンハッタンの地価高騰を受け、ビルを高層化することで投資資金を効率的に回収する狙いがある。巨大都市の街並みは大きく変わろうとしている。

世界一高い住居用ビルが誕生

 来年、セントラルパークの南側に、住居用では世界一の高さを誇る超高層ビルが誕生する。その名もセントラルパークタワー。高さ472メートル。米同時多発テロで倒壊したワールドトレードセンターの跡地に建つワンワールドトレードセンターは、尖塔部分を含めて541メートルで、現在ニューヨークで一番高いビルだが、建物自体の高さだけで比べると、セントラルパークタワーはそれを上回る。最大の売りはセントラルパーク全体を見下ろせる眺望だ。デベロッパーの売り上げ予定額は179戸で総額40億ドル超(約4300億円)。現在売り出し中の部屋で一番高額なのは、112階の5ベッドルーム(657平方メートル)で6300万ドル(約68億円)だ。
 こうした超高額住宅に興味を示し、購入を検討するのは、米国の億万長者や投資目的で売り買いする中国を中心とした海外マネーだ。セントラルパークタワーが建つ57thストリートは近年次々と高級住宅が入った超高層ビルが建っているため、億万長者が集まる場として、別名「ビリオネアーズ・ロウ」と呼ばれている。

10月上旬に撮影したセントラルパークの南側の景色。スレンダーなビルが顔を出す。セントラルパークタワーは右から4本目の背の高いビル

10月上旬に撮影したセントラルパークの南側の景色。スレンダーなビルが顔を出す。セントラルパークタワーは右から4本目の背の高いビル

 セントラルパークタワーは高いだけでなく、スリムな形状も特徴だ。ここ最近、マンハッタンではこのような「スレンダー・ビルディング」と呼ばれる極細のビルの建設が目立つ。ニューヨークでは、近隣の背の低いビルが利用していない上空部分を「空中権」として買い取り、自身の建物の容積率を大きくする手法が盛んだ。1フロア当たりの床面積がそれほど大きくない所に、上へ上へと階層を積み上げていく。建設業界では、スレンダネス・レシオといって、建物の幅と高さの割合が1:10を上回るものは極細に分類する。同じく57thストリートに来年完成予定の超高層ビル「111ウェスト57thストリート」のスレンダネス・レシオは1:23と驚きの細さだ。
 あまりのスリムさに途中でポキッと折れてしまうのではないかと心もとなさを感じるが、建築技術の発達で風による揺れなども最小限に抑えられ、安定性は極めて高いという。セントラルパークのほぼ中心部から南側を向くと、こんもりした木々の上から細長いビルがニョキニョキと伸びており、今まで見たことのない光景を生み出している。

展望台設置で観光客を呼び込む

 世界の高層ビルのデータベースを扱うCTBUH(Council on Tall Buildings and Urban Habitat)によると、マンハッタンには現在、300メートル超の超高層ビルが10棟ある。それに加え、来年以降、新たに300メートル超のビルが合計15棟も完成する予定だ。住居用だけでなく、オフィスビルや商業施設が入った複合ビルなど用途は様々だ。
 マンハッタンの西側で過去最大級の再開発として注目を集めているのが「ハドソンヤード」だ。三井不動産も一部出資している。合計約11ヘクタールの敷地に5棟の高層オフィスビルのほか、商業施設や文化施設、高級ホテル、高級住宅などが入ったビルが建つ。来年には高さ395メートルの「30ハドソンヤード」に展望台「エッジ」がオープンする予定で、完成すればニューヨークで一番高い野外展望台になるそうだ。

ハドソンヤードの中心部から撮影した高層ビルと「ベッセル」と呼ばれる建築物(左)<br />
超高層ビル「30ハドソンヤード」内はアパレル店やレストランを巡る観光客で賑わっている(右)

ハドソンヤードの中心部から撮影した高層ビルと「ベッセル」と呼ばれる建築物(左)
超高層ビル「30ハドソンヤード」内はアパレル店やレストランを巡る観光客で賑わっている(右)

グランドセントラル駅の真横で現在建設中の超高層ビル「ワンヴァンダービルト」

グランドセントラル駅の真横で現在建設中の超高層ビル「ワンヴァンダービルト」

 こうした複合施設は大規模な建設費用を回収するのに、オフィスやテナントからの収入に加え、展望台などからの入場料に頼る傾向が強い。実際、1931年からマンハッタンの観光地として君臨するエンパイアステートビルの場合、2018年の総収入のうち、展望台収入が占める割合は4割でオフィス賃料とほぼ同じだった。同ビルでは集客力を見込んで102階の最上階の展望台を改装し、先月新たにオープンした。
 マンハッタンの中心にあるターミナル駅、グランドセントラル駅近くには来年、427メートルのオフィスビル「ワンヴァンダービルト」が完成する予定で、こちらにも展望台が設置される。超高層の展望台の急増で観光客の争奪戦が激化しそうだ。

ビル急増も買い手が付かない

 米景気は長期的な景気拡大局面を経て、減速懸念が広がっている。マンハッタンのオフィス賃料の高騰は企業にとって大きな負担だ。トランプ政権が税制改正で、州税・地方税における所得税や固定資産税などの控除額を最大1万ドルに上限設定したことが富裕層の心理を冷やしているとの見方もある。実際、ニューヨーク州の不動産仲介をするストリート・イージーのグラント・ロング氏は「2013年以降にマンハッタンに新たな加わった住居用高層ビルのうち、25%以上の部屋はまだ買い手がついていない」と指摘する。それでもなお、新たに超高層ビルを建設する計画が打ち出されており、デベロッパーは強気だ。超高層ビルの建設がハイペースで進む中、マンハッタンがどのような都市に変貌するのか世界が注目している。

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坂下 曜子

アメリカ・ニューヨーク 在住歴2年

日本経済新聞社で記者として15年働く。退社後に渡米。

 
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