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インド首都圏のお手伝いさん事情

水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴13年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|インド|2019年10月21日

 外務省の統計によれば、デリー準州および隣町グルガオンにおける2017年の在留邦人は5213人(デリー準州2434人、グルガオン2779人)で、2011年の2124人(デリー準州1719人、グルガオン405人)から倍増した。実際にはその1.5倍はいるのではないか、とも言われる。

デリー日本人会が実態を調査

印サポ主催のお茶会で、集計結果を閲覧しながら情報交換をする在留邦人

印サポ主催のお茶会で、集計結果を閲覧しながら情報交換をする在留邦人

 発展途上国ではお手伝いさんを雇う日本人駐在員家庭が多い。デリー周辺では日本人が増えるにつれ、お手伝いさんの雇い方や待遇に多様性が生まれている。デリー日本人会交流部印サポには、戸惑いの声も寄せられた。印サポは在留邦人への草の根的な支援を行ったり情報交換の場を提供したりしている。
 そこで印サポはデリーやグルガオンでお手伝いさんを自費で雇用している日本人世帯を対象に調査を行い、205世帯から有効回答を得た。結果の要旨を紹介する。

 1世帯が1人のお手伝いさんに渡す月給の平均は9034ルピー(約1万3800円)、時間給は134ルピー(約200円)。また、「お手伝いさんは掛け持ちをしていない」と回答した雇い主が渡す月給の平均は1万4027ルピー(約2万1400円)だった。

 デリー準州の副首相の発表によると、デリーにおける1人あたりの平均月収は3万0461ルピー(約4万6500円)という。日本人世帯で働くお手伝いさんが得ている月給の総額が仮に1万4027ルピーだとすると、後述するボーナスを計算に入れても月1万5242ルピー(約2万3300円)であり、デリーの平均月収の半額程度の水準ということになる。

雇い主の96%がボーナスを支給

 季節的なボーナスは雇い主の96%が支給していた。平均1.04カ月分で、主な支給タイミングは秋頃のディーワーリー祭の時期。その他、「日本帰国の際に退職金を渡すことにしている」と回答した世帯もあった。

 有給休暇に関しては、状況に応じて寛容に与える傾向がみられた。具体的には、一時帰国などの雇い主の都合により勤務日数が欠ける場合は、「働いてもらったものとして、全額を支払う」と回答した雇い主の割合は、全体の93%にのぼった。お手伝いさん側の都合により勤務日数が欠ける場合、「全額を支払う」との回答は短期の欠勤の場合で全体の70%、長期の場合で40%だった。
 収入の多くないお手伝いさんにとって、収入減は文字通り致命的になり得る。それぞれの雇い主が、できる限りの配慮をしていることがみてとれる。

飲料水の提供は当たり前

 日本では、たとえば電気系統の修理業者を家に呼んだり、家具店からソファを搬入してもらったりした際、業者のほうから開口一番飲み物の提供を要求されたり、帰り際に飲料のボトルをタダで渡すよう要求されたりすることは、あり得ない。
 だが、デリーではあり得る。家に呼んだ人にまず言うべきヒンディー語の決まり文句に「ご飯は(ちゃんと)食べましたか」があるほど、飲食はきわめて重要視され、そこに金銭的・経済的な理屈は必ずしも通用しない。暑い日には無料の飲み物と食べ物がそこかしこで有志団体により配布されるし、修理業者は表情も変えず、礼も言わずに水のボトルをもらって帰っていく。
 お手伝いさんについても同様で、自分で飲料水を持ってくるとは限らない。雇い主側もそこに順応しているようで、勤務中の飲料水について、98%がお手伝いさんに提供しているか提供する用意があると回答。勤務後に持ち帰る飲料水についても、96%が提供しているかする用意があると回答した。

「完璧は求めない」

 お手伝いさんに関連する困りごとはさまざまにある。

(1) 不衛生なことをされた
 台所の流しにバケツの汚水を流される、便座を拭いた布でまな板を拭かれるなど。しかし、「不衛生なことをされたから解雇した」という話はあまり耳にしない。「もう1人雇って役割分担を考えた」「あとで自分でやり直すことにした」といった回答がみられた。

(2) 家に友人を呼ばれた
 雇い主が不在にしている時期、お手伝いさんの親族・友人・恋人に勝手に家の中に上がりこまれ、パーティーを催されたというトラブルもよくある。これも多くは解雇ではなく、「合鍵を預けないようにする」「厳しく注意する」といった対策がとられている。

(3) 小銭をごまかされた
 買い物に行ってもらったときのお釣りをごまかされる。「買い物には自分で行く」「物の相場を知るように努力する」といった対策がとられる。

(4) お金や貴重品を盗まれた、空き巣を手引きされた
 解雇にまで至るのは、多くがこのケースだろう。「やっていない」と泣かれて雇用を続行したケースもあるが、悪質だった場合、即日解雇となる場合もある。

 全体として、「お手伝いさんにあまり完璧を求めないようにしている」という回答が目立った。

現地のやり方に柔軟に対応する必要も

 一方で、雇い主の子どもに対し、まるで自分の子どものように可愛がってくれるといった回答や、女性目線から親身になって相談にのってくれる、頼りにしている、という回答も多数寄せられた。

筆者の自宅に9年間通ってくれているお手伝いさん。クリスチャンなので豚などの調理にもタブーがなく、ありがたい

筆者の自宅に9年間通ってくれているお手伝いさん。クリスチャンなので豚などの調理にもタブーがなく、ありがたい

 対人間となれば何かしらのトラブルはつきもの。その一方で、在留邦人は自分にできる範囲で現地のやり方に順応し、必要な配慮をしようとしているようだ。

関連ページ

・デリー首都圏、ヒンディー語を学ばない日本人
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=1049

・インドの街角から~独立記念日&キャッシュレス決済
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・タイにおける人材育成
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/column_detail/id=968

・【アジア編】2020年版調査をアジア14カ国で開始
https://gmc.nikkei-r.co.jp/salary/news_detail/id=1096

・【世界の統計局】インド
https://gmc.nikkei-r.co.jp/stat_area/?search_ext_col_01=01&topics_ext_options_search=1#area246

水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴13年)

不動産仲介やイベント運営など日本人サポート業務を主に行う

 
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