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バガン遺跡がついに世界遺産に~暫定リスト入りから23年

板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|ミャンマー|2019年08月05日

 アゼルバイジャンのバクーで開催されたユネスコ世界遺産委員会で7月8日、ミャンマーのバガン遺跡群の登録が決まった。最初に暫定リスト入りしたのが1996年。23年を経ての登録決定となった。

無数のパゴダが草原に点在するバガン遺跡

無数のパゴダが草原に点在するバガン遺跡

ピュー古代都市群に続き2カ所目

ピュー古代遺跡群のひとつ、ベイタノー遺跡

ピュー古代遺跡群のひとつ、ベイタノー遺跡

 ミャンマーの世界遺産は2014年にバゴー地方のピュー古代都市群が登録されたのが最初。ピュー王朝は紀元前2世紀から9世紀にかけてピュー族が打ち立て、833年に南詔(現在の雲南省のあたりにあった王国)に滅ぼされた。南詔は住民を自国へ連れ去ってしまい、王都は土に埋もれた。
 ピュー古代遺跡群の世界遺産登録が決まった際、勝因を聞かれたインタビューでベイタノー(ピュー古代遺跡群のひとつ)博物館のウーキンゾー副館長は「ピュー族が滅びたことで長く土中に埋まったままとなり、修復が手付かずだったのがよかったのではないか」と語っている。
 というのも、バガンが暫定リスト入り後に本登録になかなか至らなかったのは、当時の軍事政権を取り巻く政治的環境や遺跡エリア内にゴルフ場やホテルがあったことに加え、修復のあり方も疑問視されたからだ。

古代のパゴダも、生きた信仰の対象

敷地内に遺跡が入り込んでいるホテルもある

敷地内に遺跡が入り込んでいるホテルもある

 生きている間に積んだ功徳で来世が決まる輪廻転生思想が一般的なミャンマーで、人々は大きく功徳を積める仏塔の修理への寄進に熱心だ。彼らの信仰世界においては、修復の際に元のものより立派にすることはむしろ推奨されている。外国人が遺跡と認識するバガンの仏塔も、彼らにとっては現在進行形の信仰の対象。欧米概念での修復ではなく、グレードアップさせてしまいがちだ。
 バガンも含め国内のほとんどの遺跡が「正しい修復」がなされておらず、それが世界遺産登録への壁になってきた。打ち捨てられたがゆえに後世の人々の手がほとんど入らなかったピュー古代遺跡群が登録に成功して以降、2つ目の登録がなかなか進まなかったのはこうした背景が大きい。
 今回、バガン遺跡が世界遺産になったが、遺跡が集中するエリアにはいまだ多くのホテルが営業を続けている。現在、バガン遺跡から車で10~20分ほどの周辺地域にホテルゾーンを造成しており、今後はこのゾーンにホテルを集中させていく方針のようだ。

観光客誘致の起爆剤へ、高まる期待

ぽつぽつとホテルが建ち始めているホテルゾーン

ぽつぽつとホテルが建ち始めているホテルゾーン

 ホテル観光省の発表をもとに書かれた「ジ・イラワディ」誌の記事によれば、陸路入国を除いた外国人旅行者数は2017年の344万人から、2018年は355万人へと増加。国別では中国が約30万人、タイが約29万人、日本が約10万人となっている。
 前年比で38%も増えた中国人に対し、西欧諸国からの旅行者は半減した。この傾向はロヒンギャ問題が顕在化した2017年から始まっている。そこで政府はロヒンギャ問題が観光にあまり影響を与えないアジア人旅行者の来訪を促そうと、2018年10月から日本と韓国、マカオ、香港からの旅行者のビザを免除し、中国人には到着時ビザの発行を始めた。この効果が現れてきたといえる。
 ホテル観光省は2019年の外国人旅行者数を450万人と予想しているが、この数字を達成するには、欧米人観光客の呼び戻しも重要だ。今回のバガンの世界遺産登録がアジア人旅行者のみならず、欧米人旅行者の回復につながることが期待されている。

出典

・2018 Tourist Numbers Rise Slightly, Chinese Up 38%
https://www.irrawaddy.com/news/burma/2018-tourist-numbers-rise-slightly-chinese-38.html

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板坂 真季

ミャンマー・ヤンゴン(在住歴5年)

ミャンマー在住6年目の編集・ライター&取材コーディネーター。著書に『現地在住日本人ライターが案内するはじめてのミャンマー』(徳間書店)など。

 
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