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カンボジアで急速に広がる電子決済

多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|カンボジア|2019年07月31日

 現在カンボジアで稼働している携帯電話は2920万台で、そのうちの52%(1518万台)が3Gまたは4G回線を利用していると推計される。これは人口1648万人の同国において、単純計算で国民の95%以上がインターネットを利用できる環境にあることを意味している。都市部では携帯電話の2台持ち、3台持ちをしている人もいるので、もう少し低いだろうが、後発途上国にしてはかなり高い普及率のように感じる。
 そんなカンボジアで最近広がり始めているのが携帯電話と連携した電子決済だ。今回はカンボジアの電子決済事情を紹介する。

Wingの取扱店。街を歩くと看板をよく目にするが、最近は減ってきている気もする

Wingの取扱店。街を歩くと看板をよく目にするが、最近は減ってきている気もする

地元の巨人Wing VS 黒船true money

 まず紹介する「Wing」は2009年よりサービスを提供している、国内最大手の電子決済サービスである。サービスは極めてシンプルで、Wingのシステムを通じて送金ができるというものだ。アカウントを取得して利用することもできるが(アカウント同士の送金だと手数料が安い)、非アカウント所有者も電話番号さえあれば誰でも利用できる。例えば、都市部に出稼ぎに来ている子が、親に仕送りをする場合は下記のフローで送金できる。

1. 子はWingサービス取扱店(携帯ショップや両替商など)に現金を持って行き、自分と親の電話番号を伝えて現金を託す。
2. 取扱店が金額と電話番号をシステムに登録すると、暗証番号が発行される。
3. 子が電話やSMSなどでその暗証番号を親に伝える。
4. 親が最寄りのWingサービス取扱店に行き、自分の電話番号と暗証番号を伝えると現金を受け取れる(その際に手数料を支払う)。

ture moneyのサービス取扱店。携帯電話店や個人商店などが取り扱っており近年急激に窓口数を増やしている

ture moneyのサービス取扱店。携帯電話店や個人商店などが取り扱っており近年急激に窓口数を増やしている

 この登録を必要としない電子決済サービスは、銀行口座やクレジットカード普及率の低いカンボジアにおいて、その穴を埋める役割を担って爆発的に広まり、今や国内全州の全地区で利用できるようになっている。そのサービスは送金だけにとどまらず、オンラインショップや公共料金の支払いにも活用されており、利用分野は拡大傾向だ。一方で2015年にはタイ最大のコングロマリットであるCPグループの通信会社trueが、「true money」というほぼWingと同様のサービスの提供を開始しており、し烈な競争が繰り広げられている。

若者を中心に急激に普及しているPi Pay

スーパーの入口に貼ってあったPi Payのステッカー

スーパーの入口に貼ってあったPi Payのステッカー

 ここ数年、街中の飲食店やショップの店頭、映画館、スーパー、タクシーなどに「Pi Pay」と書かれたピンク色のステッカーが貼られているのをよく目にする。これらの店では電子決済モバイルアプリ「Pi Pay(パイペイ)」での決済が可能であることを表している。Pi Payは2017年にリリースされ、累計70万ダウンロード、アクティブユーザーは25万人、国内で3500事業者が加入する大手の電子決済システムとなっている。

Pi Payのログイン後画面。フードデリバリーや公共料金(電気・水・ゴミ)の支払いにも利用可能だ

Pi Payのログイン後画面。フードデリバリーや公共料金(電気・水・ゴミ)の支払いにも利用可能だ

 Pi Payは携帯電話アプリを利用した電子決済サービスで、利用時にアカウントの取得が必須となる。そのうえで、街中に設置されているPay Goという端末を使い、自分のアプリ上のウォレット(財布)に課金することで、電子決済を利用できるようになる。一見まどろこしいサービスだが、Pi Payで決済すると様々な店舗で割引を受けることができる。
 例えば6月26日にはドーナツチェーンのKrispy Kremeの商品がPi Pay支払いで全品50%割引になったし、オフィス近くのパン屋ではいつでもモーニングセットが20%割引になる。こうした割引プロモーションが功を奏し、現在は都市部の若者を中心に急速に普及している。
 今年3月には中国のAlipayやWeChatPayとの提携も始まった。中国人旅行者や在住者の間でも利用可能となり、今最も注目される電子決済サービスだ。内外の業者が入り乱れ、電子決済サービスの競争は激しさを増している。

出典

・Digitising Cambodiaʼs economic future
https://www.khmertimeskh.com/565882/digitising-cambodias-economic-future/

・Cambodia Population
https://www.worldometers.info/world-population/cambodia-population/

・Pi Pay leads Kingdomʼs new payment revolution
https://www.phnompenhpost.com/business/pi-pay-leads-kingdoms-new-payment-revolution

・【カンボジア】急成⻑を遂げる電⼦決済アプリ「Pi Pay」の今とこれから
https://roboteer-tokyo.com/archives/13841

関連ページ

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多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

カンボジア発の季刊カルチャー誌「クロマーマガジン」編集長

 
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