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ロンドンで車の排ガス規制スタート、大気汚染悪化に歯止めなるか

峰松 愛

イギリス・ロンドン(在住歴23年)

プロフィール詳細

欧州・ロシア・CIS|英国|2019年06月13日
大気汚染度が基準を超えるロンドン・シティ地区

大気汚染度が基準を超えるロンドン・シティ地区

 近年深刻さを増すロンドンの大気汚染。法基準を超える汚染度で喘息や肺病など健康被害への懸念が深まる。こうした中、汚染の主な原因とされる車の排気ガスを規制する目的で、4月8日からロンドン中心部に「超低排出ゾーン(Ultra Low Emission Zone、略称ULEZでユーレズと発音)」が導入され、ゾーン内に乗り入れる規制対象車両への課金が始まった。

既存の渋滞税とダブル課金

 古くて排気ガス量の多い車両が規制の対象。ULEZ内に入る場合、普通乗用車と自動二輪車は一日12.50ポンド(約1750円)、バスやトラックなどの大型車は一日100ポンド(約14000円)の乗り入れ料金を支払わなくてはならない。排ガス量の多いディーゼル車には特に厳しく、ガソリン乗用車の対象が2004年以前の登録なのに対し、ディーゼル車の場合は2015年以前となる。

 ロンドンでは、交通渋滞緩和の目的で2003年に渋滞税(Congestion Charge)が導入され、平日の午前7時から午後6時までの間に中心部に乗り入れる車には一日11.50ポンド(約1600円)の支払いが義務付けられているが、ULEZの導入で規制対象車は渋滞税に加えてULEZ料金の支払いも必要となった。しかも、平日の日中に限定の渋滞税と異なり、ULEZは1日24時間規制される。ロンドン交通局によると、一日推定およそ4万台の車両がULEZの課金対象になるという。

「ここからゾーン!」渋滞税とULEZゾーンの表示版

「ここからゾーン!」渋滞税とULEZゾーンの表示版

対象ゾーン、2021年秋からロンドン全域に

路上駐車が日常の住宅街

路上駐車が日常の住宅街

 ULEZの対象地域は渋滞税ゾーンと同様、ロンドン中心部のシティやウェストミンスター区域に限られているが、大気汚染の深刻さは郊外の住宅街でも例外ではない。ULEZ規制は2021年10月25日から、ロンドン全域で適用される予定だ。
 都心から地下鉄で約30分の北東ロンドンの著者が住む町も、交通量の多い道路沿いの空気の悪さは相当なもので、3年後にはゾーン内になる。自宅に駐車スペースがなくても、居住区の役所に登録すれば自宅付近に路上駐車が可能なため、車の所有世帯はかなりの数に上る。通勤のほか、子供の学校の送り迎え(イギリスでは小学校まで保護者の学校送迎が義務)やスーパーへの買い出しなど、車を日常的に使う家庭が多い。
 2021年秋からのゾーン拡大で車の買い換えか、車のない生活を選ぶ世帯が急増することになるだろう。まだまだ一般的でない電気自動車の需要も一気に高まりそうだ。

増えつつあるEV車のロンドンタクシー(LEVC社製)

増えつつあるEV車のロンドンタクシー(LEVC社製)

 ロンドンの空気の悪さは思わず口を覆いたくなるほど。イギリスでは歩行者のマスク使用が一般的でなく、マスクを使いにくいのがつらいところだ。基準値を超える大気汚染地域にある小学校は450校以上にも上るそうで、小児喘息が深刻化している。また、高齢者の肺病や心臓病などの健康被害も拡大している。今回のULEZ導入でロンドンの大気汚染が大幅に改善されることを切に願いたい。

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峰松 愛

イギリス・ロンドン(在住歴23年)

東京で出版社勤務後、渡英。編集やライターの仕事の傍ら、ロンドンのオフィス街で日本語教師として活動。

 
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