トップ  >   プログラム  >   世界の街角ライブラリー  >   カンボジアの銀行金利で感じる日本経済の病的状況

プログラム|世界の街角ライブラリー

カンボジアの銀行金利で感じる日本経済の病的状況

多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|カンボジア|2019年06月07日
カンボジア最大手のカナディア銀行シェムリアップ支店。高金利目当てに口座開設に訪れる日本人も多い

カンボジア最大手のカナディア銀行シェムリアップ支店。高金利目当てに口座開設に訪れる日本人も多い

 先日日本に帰国した際、実家にとある銀行よりダイレクトメールが来ていたので開けてみた。そこには5万円ちょっとの残高と、昨年の利息0円と記載されていて、定期預金に変えないかという案内があった。
 現在の利率は年0.001%しかないが、2年の定期に入れると0.16%の利率が付くと言うのだ。しかし、定期にして受け取れる利息は2年間で約130円。こんな金額では小学生の小遣いにもならない。日本の銀行はタダ同然で預金者から預かった金を運用して食っているわけだ。

日本人に話すと驚かれるカンボジアの銀行利息

各行が店頭配布している定期預金のサービス案内パンフレット

各行が店頭配布している定期預金のサービス案内パンフレット

 私がこのように感じてしまうのは、カンボジアの金利が高すぎるからなのかもしれない。現在、給与振込口座に使っているカンボジア・パブリック銀行(マレーシア資本の地場銀行)の金利は、普通預金で年0.15%、1年定期預金にすれば年3.5%の利率が米ドル建てで付く。単純に定期で500米ドル入れておけば17.5米ドルの利息が受け取れるわけだ。しかし、これは大手銀行の金利。新興銀行になるともっと高くなる。

 下記の数字はすべて米ドル建て、金利は年利(定期預金は1年もの)である。
 比較的信頼度が高いとされるプノンペン商業銀行(ソフトバンク系)は普通預金の利率が0.8%、定期預金は5%。サタパナ銀行(パチンコでおなじみのマルハンの運営するマルハンジャパン銀行が買収・運営する元地場マイクロファイナンス)の普通預金は1%で、定期預金では6.25%となっている。
 信頼度は低いが、地場のマイクロファイナンスともなればもっと高くなる。AMKは普通預金ですら4%、定期預金は7.5%。KREDITの普通預金は3.5%、定期預金は8%となっている。

「財布の結束力」で破産を回避

 預けると高金利を受け取れるということは、銀行側が貸す場合も高金利の設定になっているのは当然のこと。ちなみにカンボジア・パブリック銀行の住宅ローンは最低でも6.99%。サタパナ銀行は8.5%、KREDITは18%となっている。日本の住宅ローンが1%以下なので、いかにカンボジアの金利が高いかお分かりいただけただろう。しかし私がカンボジアに住んで7年、ローンをしてバイクや車、家などを購入するカンボジア人にはいくらでも会ったが、不思議と返済できなかったというケースは一度も聞いたことがない。
 これについて、現地の金融業に勤めている日本人に話を聞いたことがある。実際返済に苦しむケースがあっても、破産することは極めて少ないそうだ。その理由として中古市場の価格が高水準で安定しているとか、借入金額がそれほど大きくないとか、いくつか挙げていたが、最大の理由は家族間での結束力だと言っていた。
 家族の誰かがローンの返済ができなくなれば、親兄弟はもちろん、おじ、おば、いとこぐらいまでは返済の手助けをしてくれるそうだ。確かに、カンボジア人の家族の「財布の結束力」は日本の家族の平均のそれとは比べ物にならないほど強い。私もカンボジア人と結婚しているため、無計画な資金繰りによってとばっちりを食ったことがあるので納得がいく。

 いずれにせよ、カンボジア人は欲求のまま金を借りて使いまくる。それはカンボジアに、非常にシンプルに欲求を実現できる社会的・感覚的構造が根底にあるからである。なので、日本でダイレクトメールを手にした私は、日本経済の病的な部分を感じ、戦慄したのである。

※金利はすべて2019年5月時点のもの

関連ページ

・カンボジア人が海外旅行できる時代
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=1060

・カンボジア、オート三輪に駆逐されるトゥクトゥク
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=1047

・カンボジアで年1000万円稼ぐ屋台のおばちゃん
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=1031

・カンボジアにおける物件探しとは
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=1007

・箱買いも当たり前!? カンボジア人の生活に欠かせない缶飲料
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=985

・ミャンマーとカンボジアの日系企業の給与事情
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/column_detail/id=981

多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

カンボジア発の季刊カルチャー誌「クロマーマガジン」編集長

 
PAGETOP