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デリー、バレンタインデーへの抵抗下火に

水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴13年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|インド|2019年02月08日

受け入れられないヒンドゥー右派勢力の活動

 デリーにはキリスト教文化に抵抗するヒンドゥー右翼勢力が存在する。特に標的となりやすいのはバレンタインデーである。

 右翼勢力にとって、バレンタインデーを悪玉扱いする理由は2つある。「もともと西洋文化であること」と「性的にふしだらであること」だ。インドの若者たちのバレンタインデー週間は2月7日の「ローズ・デー」から2月21日の「ブレイクアップ・デー」まで、実に15日間続く。その中には「ハグ・デー」や「キス・デー」のように、具体的な行為を推奨するものもある。

 しかし、近年「バレンタインデーにちなんだ商品を売る店を襲撃して商品を燃やしてみせる」といった過激な抵抗活動はほとんどみられなくなった。これは右翼勢力が丸くなったからというより、暴力的な抵抗活動が一般に受け入れられなくなってきたからだとみられている。代わりに、Twitterで「両親を敬う日」というタグをつけて大量の投稿を行い、「バレンタインデー」のタグがついた投稿を埋もれさせてしまおうという抵抗が試みられている。それはそれで大きな流れとなってはいるが、同じく大きな流れを作っているバレンタインデーを祝おうとする側の若者たちを止めるまでの力はもっていない。

モールにツリーの飾りつけ、クリスマスは風物詩に

サンタクロースの飾りの前で写真を撮るシーク教の家族

サンタクロースの飾りの前で写真を撮るシーク教の家族

 右翼勢力がバレンタインデー以上に攻撃しにくいのが、クリスマスである。クリスマスが「性的にふしだら」というのはインドの場合当てはまらないため、攻撃する理由として使えるのは「もともと西洋から来たものを我々が祝うとは何事か」という一点に集約されるが、都市部には「それの何が悪い」という雰囲気が漂っている。
 2011年のインド国勢調査によれば、キリスト教徒は2400万人を超えるが、割合で言えば全人口のわずか2.3%である。そのキリスト教徒の文化をキリスト教であるからという理由のみで悪玉扱いし、暴力的な行為に訴えることには、少なからぬインド人が理解を示さなくなったようだ。
 近年、デリーの主要なショッピングモールでは、豪華なクリスマスツリーの飾り付けがなされている。デリーのキリスト教徒の割合は0.87%と全国の中でも少ないが、ヒンドゥー教徒やシーク教徒、そのほか様々な人々がツリーや飾り付けの前で足を止め、楽しげに家族写真を撮っている。

年末年始はほとんどが通常営業

ディーワーリー祭のため贈り物を購入するインド人

ディーワーリー祭のため贈り物を購入するインド人

 クリスマスの後には年末年始が控えるが、デリーではさほど特別視されていない。10~11月頃に行われる光の祭典ディーワーリー祭、3月頃に行われる色かけ祭りのホーリーなどの際には長期休暇をとることが多い。ただ、年始は会社によっては元日も出勤日になっている。
 若者が年末年始を楽しもうと、クラブやディスコでは「カウントダウン・パーティー」に類似したものは開かれている。ただ、学生や若者御用達のぎゅうぎゅう詰めのクラブですら、食事は別料金、安いビールと安いウイスキーつきで入場料は1人3500ルピー(約5400円)と、あまり手頃感はない。
 結果として、多くの人の年末年始はほとんど通常営業で進み、クリスマスの飾り付けは1月に入っても撤去されない。年末年始の実感はほとんどない中、クリスマスの存在感は年々増しているようにも見える。

関連ページ

・インドに「チャーイのチェーン店」
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=971

・「インド」らしくない都市バンガロール
https://gmc.nikkei-r.co.jp/research_detail/id=1028

・【世界の統計局】インド
https://gmc.nikkei-r.co.jp/stat_area/?search_ext_col_01=01&topics_ext_options_search=1#area246

水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴13年)

不動産仲介やイベント運営など日本人サポート業務を主に行う

 
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