トップ  >   プログラム  >   世界の街角ライブラリー  >   デリー首都圏、ヒンディー語を学ばない日本人

プログラム|世界の街角ライブラリー

デリー首都圏、ヒンディー語を学ばない日本人

水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴13年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|インド|2019年04月05日

 インドに赴任した日本人ビジネスパーソンの多くは、ヒンディー語をはじめとしたインドの諸言語を学ばないまま任期を終えるといわれる。その理由としてよく耳にするのは、
 ①話者数トップのヒンディー語ですらインド全土で通用しない
 ②英語で代替・上位互換できる
 ③学んでいるうちに任期が終わる
 --などである。上記のうち①は事実である。②と③はどうだろうか。

英語は代替にならず

 デリー首都圏に住む約1700万人のうち、ヒンディー語を母語とするのは類似の諸語・諸方言を入れない計算でも81.3%にのぼるが、英語を母語とするのは約6000人、0.04%に過ぎない(2011年インド国勢調査)。
 「経験的に半数以上のインド人が英語を話している」という意見がある。それは、日本人駐在員が出会うインド人の層がいかに限られているかを皮肉にも物語っている。インドでは第1言語から第3言語までのいずれかに(類似の諸方言等を含めた)ヒンディー語が入る比率は57.1%であるが、英語のそれは10.6%しかない。トリリンガルの割合自体が全体の7.1%なので、「第4、第5言語と広げていけば、英語話者が過半数になる」というわけでもなさそうだ。
 インドで英語は有用だ。しかし、英語がヒンディー語の上位互換になるわけではない。

現地語を話そうとする態度が重要

 「外国人がヒンディー語を話せばいいのに」と思っているインド人がいるかと問われれば、それは特に思い当たらない。彼らに言わせれば、「ヒンディー語を話さないのも人間のバリエーションのひとつだ」という。いかにも多様性を前提とするインドらしい考え方だ。
 しかし、ヒンディー語で聴取を進めてみると、「英語しか喋らない外国人はお客様であって理解者ではない。相手が理解者でなければ、ありのままの伝え方をしてもトラブルになるだけだ」という言葉があふれ出てくる。
 ここで重要なのは、英語を話す外国人に対してインド人が本音で話さないときの理由は「英語ではうまく意思の疎通ができないから」ではない、ということだ。ヒンディー語を話そうとする「態度」が情報の質を変える。

意外に簡単? 習得に時間かからず

 「ヒンディー語は難しいから、学んでいるうちに任期が終わってしまう」と考える駐在員がいる。確かに、文字からしていかにもとっつきにくそうに見える。
 しかし、ヒンディー語の文字は子音と母音の組み合わせから成っており、見た目ほどには習得に時間をとられない。しかも、デリー首都圏のビジネスヒンディー語は話し言葉である。教科書を読むために文字の習得は必要ではあるが、その後はほぼ必要なくなる。たとえば、メッセンジャーアプリなどでの意思疎通もアルファベットで行われるのが普通だ。

筆者の学習ノート。この文字を見て早々に諦める日本人は多い

筆者の学習ノート。この文字を見て早々に諦める日本人は多い

韓国企業、言葉を学んで日本をリード

メッセンジャーアプリ「WhatsApp」での会話の様子。ヒンディー文字が使われることはまずなく、アルファベット表記で意思疎通が行われる。外来語としての英単語もふんだんに使うことが許されるが、相手には「ヒンディー語を話している」と認識される

メッセンジャーアプリ「WhatsApp」での会話の様子。ヒンディー文字が使われることはまずなく、アルファベット表記で意思疎通が行われる。外来語としての英単語もふんだんに使うことが許されるが、相手には「ヒンディー語を話している」と認識される

 インドでは、日本企業が韓国企業にリードを許している分野が多いといわれる。それでは韓国企業はヒンディー語にどう対応しているのだろうか。
 韓国人の現地採用者は「韓国人の駐在員が勤務しながら急いでヒンディー語を習得するのは珍しくない」と語る。確かに、高級ホテルThe Oberoiの会議室担当者は「会議がヒンディー語なら韓国人、英語なら日本人だとわかる」と耳打ちしてくれた。
 国立ヒンディー語学校デリー校の韓国人生徒の属性にも、興味深い傾向がみられた。授業が平日の日中に行われるにもかかわらず、昨年度の韓国人生徒の多くが大手韓国企業の駐在員や韓国の本社からの長期出張者だったという。

 まずは、会話のはしばしにヒンディー語を取り入れてみるだけでも、相手の態度は大きく変わる。トライしてみることをすすめたい。

出典

・Office of the Registrar General & Census Commissioner, India
http://www.censusindia.gov.in/2011Census/Language_MTs.html

関連ページ

・デリー、バレンタインデーへの抵抗下火に
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=1061

・「インド」らしくない都市バンガロール
https://gmc.nikkei-r.co.jp/research_detail/id=1028

・28カ国90人の留学生を組織~翻訳、インタビュー…新年度の活動開始
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/column_detail/id=1051

・【世界の統計局】インド
https://gmc.nikkei-r.co.jp/stat_area/?search_ext_col_01=01&topics_ext_options_search=1#area246

水洗 満美

インド・ニューデリー(在住歴13年)

不動産仲介やイベント運営など日本人サポート業務を主に行う

 
PAGETOP