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カンボジア、オート三輪に駆逐されるトゥクトゥク

多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|カンボジア|2019年02月14日
今でも田舎で見かける大型ルモーク

今でも田舎で見かける大型ルモーク

 カンボジアを訪れたことがある人ならご存知だろうが、同国の庶民の足といえば「ルモーク(通称:トゥクトゥク)」である。ルモークはバイクで客車を牽引するシンプルな乗り物で、もともと牛で引っ張っていた荷車をバイクで牽引するようになったのが起源だそうだ。かつては大型の荷車に大量の人や荷物を積んで走っていたが、内戦後に対面式の屋根付きへと姿を変えた。

ルモークはカンボジアの原風景

休憩時間には客車にハンモックを吊って昼寝できたりも…

休憩時間には客車にハンモックを吊って昼寝できたりも…

 バイクを持っていて、600~700米ドル程度の客車を買えれば気軽にタクシー運転手になれる。このため、ルモークは21世紀に入ってから低所得者の間で爆発的に広まり、今日ではカンボジアの各地で目にすることができる。乗客は360度を見渡しながら全身で風を感じられ、ドライバーも休日は家族と一緒に行楽に出かけたりできる。そんなルモークは、もはや現代カンボジアの原風景ともいえる乗り物となっている。

 近年このルモークが、とある乗り物に駆逐されつつある。インドで「オートリキシャ」と呼ばれているあの乗り物、オート三輪である。今やプノンペンやシェムリアップで見かける庶民向けタクシーの3割近くがこれにとって代わられており、もはやカンボジアの風景そのものが変化し始めている。

LPガス仕様まで登場

 最初にカンボジアへ乗り込んできたのは、インドのバジャージ・オート社のLPガス仕様オート三輪「RE」である。これをカンボジアの街中で見かけるようになったのは、2016年頃からだろうか。
 非産油国であるカンボジアは近年の原油価格上昇の影響をもろに受けており、ガソリン価格の高騰はルモークドライバーの家計を圧迫していた。ちなみに2019年1月22日付のレギュラーガソリン価格は1リットル=3500リエル、LPガスは同2000リエルだ。これまでもガソリンより安価にもかかわらず、ガソリンとほぼ同じ燃費で走るLPガスを燃料とした自動車は長距離タクシーの間で使われてきた。しかし、15年落ちの中古セダンにすら1万2000米ドル以上の値が付く上に、それに高額なLPガス車両改造を施すなどというのは、カンボジアの一般市民たちにとって高嶺の花であった。そんな中起こった、新車4000米ドル以下のLPガス仕様オート三輪の登場は彼らの間で革命的だった。

左:長距離バスの停留所にはオート三輪が客待ちスタンバイ<br />
右:市内で販促プロモーションに使われるバジャジ社製「RE」

左:長距離バスの停留所にはオート三輪が客待ちスタンバイ
右:市内で販促プロモーションに使われるバジャジ社製「RE」

配車アプリがオート三輪の普及を加速

 そしてこのオート三輪の普及を後押ししたのが、ほぼ同じころに市場に出回り始めたタクシー配車アプリである。ガソリンを燃料とするルモークより、オート三輪の方が走行距離当たりの運賃が安い設定になっている。乗車前に車種を指定できる仕組みから、ユーザーの間で支持が広がっている。

国内最大手の配車アプリ「PassApp」の操作画面<br />
オート三輪(右画像中段)はルモーク(右画像下段)の75%の値段設定となっている

国内最大手の配車アプリ「PassApp」の操作画面
オート三輪(右画像中段)はルモーク(右画像下段)の75%の値段設定となっている

 オート三輪を世に送り出したピアッジオ社による元祖オート三輪「Ape」のニューモデルや、いずれもインド産のTVSモーター社製「King」、ATUL社製「GEM」など、今やカンボジアの街はカラフルなオート三輪に染められつつある。

左:Ape 中央:TVS 左:ATUL

左:Ape 中央:TVS 左:ATUL

専ら観光ツアー用の乗り物になってしまった自転車タクシーのシクロ

専ら観光ツアー用の乗り物になってしまった自転車タクシーのシクロ

 カンボジアのアイデンティティーだったルモークは、一体いつまで生き残ることができるであろうか。いつしか、自転車タクシーのシクロのように絶滅危惧に瀕して保存活動がされる日が来るのかもしれない。

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多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

カンボジア発の季刊カルチャー誌「クロマーマガジン」編集長

 
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