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カンボジアで年1000万円稼ぐ屋台のおばちゃん

多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|カンボジア|2018年12月05日

 「東南アジアの屋台」とは大概、ちょっと小汚いけど、安くて美味しい。そしてそこで働く「屋台のおばちゃん」と言えば、手際よくテキパキと働き、気が強くて笑顔がチャーミングというのがステレオタイプで、リッチという概念とはかけ離れた存在であると勝手に思い込んでいた。そんな先入観を覆す、カンボジアで年収1000万円の屋台のおばちゃんに出会ったのでリポートしたい。

1本50円の串揚げを売り続けて

肉団子には胡椒がたっぷり入っていて癖になる味

肉団子には胡椒がたっぷり入っていて癖になる味

 この屋台はバッタンバンという人口20万人ほどの長閑な街にある。おばちゃんと3人の給仕スタッフで、15時から21時まで営業している。主力商品は串揚げ肉団子1本約50円。肉団子はすり身にした牛肉に、でん粉、調味料を加えて練ってから茹でたもので、肉団子というよりも練り物といった方が想像しやすいかもしれない。これを串に刺し、外がカリッとするように油で揚げ、チリソースまたはピーナッツソースと一緒に提供する、という極めてシンプルな店である。

 屋台はいつも満席で、屋台の周りにはテイクアウトの客が群がっている。そして1日にこの肉団子をなんと1500本以上も販売し、7万5000円以上も売り上げている。ちなみに3人いる給仕の人件費と場所代は、足しても1日3000円程だそうで、材料や諸々の支出を差し引いた営業利益は売り上げの半分以上も残るというから、勝手におばちゃんの年収を計算すると1000万円超ということになる。

店はフライヤーを備えた移動式屋台1台に、8卓32席で構成されている

店はフライヤーを備えた移動式屋台1台に、8卓32席で構成されている

カンボジアならではの消費者心理と、情報環境が人気を後押し

熱帯の常温下に置かれても傷まない、かなり不思議な練り物たち

熱帯の常温下に置かれても傷まない、かなり不思議な練り物たち

 どうしてここまでこの屋台が流行っているのか。
 最大のポイントは、おばちゃん一家がこの肉団子すべてを保存料・着色料無添加で手作りしているという点だ。揚げ練り物は東南アジア各地でよく見かける屋台料理だが、そのほとんどが工場で大量生産され、何が添加されているのか見当もつかない。
 特にカンボジア人は国境を挟んでいつでも敵国になり得る隣国からの輸入に頼った食環境にある。揚げ練り物が大好物であるにもかかわらず、常に警戒心や不安感を抱きながら食べなければならない。そうした中、目の前にいる同胞のおばちゃんが作ったという安心感は、彼らにとって強力な購買決定要因となる。

 またこの屋台、おばちゃんはただ笑顔で肉団子を売っているだけなのだが、地元民の口コミやSNSで評判となり、デジタルメディアなどでも取り上げられ、いつしかその名は全国に轟いていたという。絶対量と選択肢が少ないクメール語情報網においては、一度火が付くと爆発的に情報が拡散されるという構図がうかがえる。かくいう僕も、プノンペンに住む知人にバッタンバンへ行くと話したところ、是非この店に行って来いと言われて知ったくらいだ。
 しかしカンボジアが一度火が付くと直ぐにパクりが出現し、足を引っ張り合っているうちに、気が付けば飽きられてしまうというお国柄であることも忘れてはいけない。すでにパクり店はシェムリアップやプノンペンで出現している。それに対抗してか、おばちゃんは今年8月にプノンペンにも出店を果たした(プノンペン店のFacebookページ)。今カンボジアでは密かな揚げ肉団子屋台商戦が展開されている。

関連ページ

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・箱買いも当たり前!? カンボジア人の生活に欠かせない缶飲料
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多賀 シモン

カンボジア(在住歴7年)

カンボジア発の季刊カルチャー誌「クロマーマガジン」編集長

 
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