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カンボジア料理に欠かせない天然ハーブ

矢羽野 晶子

カンボジア在住10年

プロフィール詳細

アジア・オセアニア|カンボジア|2018年08月28日

パクチーのないカンボジア料理

 ここ何年か、日本では空前のパクチーブームと聞く。以前はその独特のにおいが敬遠されていたのに、今や国民的ブームまで巻き起こすとは、時代も変わったものだと思う。
 パクチー料理といえばベトナムだろう。国境を接し、食文化も通じているカンボジアにも当然パクチーは存在するのだが、料理で使われているところはあまり見ない。しかし、カンボジアも負けず劣らずの「ハーブ食王国」だ。様々な天然ハーブがあちこちで見られ、料理にもふんだんに活用されている。ハーブ、というとおしゃれに聞こえるが、野草といったほうが雰囲気は近いかもしれない。家の周りに生えている草や花を摘み、それが食卓に上るといった風だ。なんとも原始的ではあるが、地産地消を地で行っている、と言うこともできる。

カンボジア料理に欠かせないハーブ

 以前、こちらの記事でカンボジアに出回っている多くの野菜が輸入品である、と書いたが、元々農村で食されているような純粋なカンボジア料理には、このハーブがとにかく欠かせない。野菜の代役的にハーブが活躍しているのだ。実際、どんなハーブが使われているかというと、ミント、ノコギリコリアンダー、ホーリーバジル、リモノフィラ、ドクダミ、モリンガなど。中には「これは何?」というような、見たこともないハーブもある。場所や時期によっては家の周りで採取することもあるが、もちろん市場でも購入できる。

実も花も葉も、すべてが食材

ヌンバンチョック

ヌンバンチョック

 これらのハーブがどのように食されているのか。基本的には生でそのままいただくことが多い。生春巻きに入れたり、焼き魚と一緒に食べたり、麺料理のトッピングにしたり。ホーリーバジルは、炒め物にも使われる。ハーブではないが、かぼちゃは葉や花もいただく。この場合は、かぼちゃの実と葉と花を一緒に煮込んで、やさしい味のスープにすることが多い。かぼちゃはカンボジアという言葉が訛って「かぼちゃ」になったとも言われている、数少ない伝統的な野菜だ。カンボジア人にとっては、葉も花もすべてがハーブのごとく食の対象なのかもしれない。
 ちなみに、ハーブというとハーブティを思い起こす人も多いと思うが、カンボジアではそのような使い方はされない。ゴーヤなどの種を煮出してお茶にすることはあるが。

代表的なハーブ料理

 それでは、代表的なカンボジアのハーブ料理をいくつか紹介しよう。
 まず、カンボジア人のソウルフードとも言える「ヌンバンチョック」。蒸した米麺に、ココナッツミルクと魚の発酵ペーストを合わせたソースをかけ、その上にハーブを盛っていただく。このソースは少し臭みがあり、好き嫌いは分かれるところだ。店によってはココナッツカレーも用意しているので、初心者にはそちらのほうが無難かもしれない。なお、これは主に朝食として食されるので、朝食を出している店や屋台や市場を覗いてみよう。

バンチャエウ

バンチャエウ

 次は「バンチャエウ」。ベトナムのバインセオに似ていて(ほとんど同じ?)、ひき肉やもやしをターメリックの皮で包んだ、お好み焼き風のスナックだ。手で一口大にちぎって、別添えのハーブと一緒にタレにつけていただく。肉のこってり感がハーブで緩和され、さわやかな風味が口いっぱいに広がる東南アジアらしい一品だ。
 バンチャエウは軽食で、街角にある軽食専門店(たいてい午後からオープン)や、シェムリアップならアンコール・ワット前にあるバンチャエウ専門店などで食べることができる。

 言うまでもなく、ハーブには沢山の効能がある。年中暑いカンボジアで、カンボジア人が元気でいられるのは、常にハーブを食しているからかもしれない。ハーブ料理は、どちらかというと田舎の料理や軽食が多いため、観光客が行くようなレストランでは出会わないかもしれない。しかし、もし見かけたらチャレンジしてみてほしい。ハーブ料理にこそ、カンボジア料理のエッセンスが凝縮されているのだ。

シェムリアップ近郊の村の屋台。山盛りのハーブがテーブルに常時置かれている

シェムリアップ近郊の村の屋台。山盛りのハーブがテーブルに常時置かれている

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・箱買いも当たり前!? カンボジア人の生活に欠かせない缶飲料
https://gmc.nikkei-r.co.jp/features/overseas_detail/id=985

・ミャンマーとカンボジアの日系企業の給与事情
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矢羽野 晶子

カンボジア在住10年

現地情報誌『クロマーマガジン』元編集長。

 
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