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進化する巨大市場 - アフリカビジネスの現状と展望

古山 修子

ダルバーグ・ナイロビ事務所(パートナー)

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ビジネス全般|中東・アフリカ|2016年04月06日

 今年8月にアフリカ、ケニアにて開催される第六回アフリカ開発会議(TICAD VI)を前に、アフリカへの関心を高める日系企業も多いかと思う。総人口10億人、言語や習慣等が異なる多様な54ヵ国から成る巨大大陸アフリカの現状を、マクロな視点と現地で展開される具体的な事業モデルの例を交えて、現地からの視点でご紹介したい。

資源調達を超えたアフリカビジネスの可能性

 アフリカでのビジネス・チャンスと聞くと、天然資源の調達を真先に思い浮かべる方が多いかと思う。しかし、近年では、これら資源調達以外の分野を目的にアフリカ市場へ参入・事業拡大している多国籍企業が増えている。例えば、米ジェネラル・エレクトリック(GE)社の2014年度のアフリカでの売上高は40億米ドル(約5兆円)にものぼり、全体の売上の3%を占める。また、エネルギー、保健、鉄道等の分野への投資を通して、今後5年間で100億米ドル(約12兆円)の売上高をアフリカ市場で達成すると昨年末に発表している。また、つい最近欧州系保険会社アクサが、ナイジェリア発のオンラインショッピング会社ジュミア等を傘下に持つアフリカインターネットグループへ4千万米ドル(約50億円相当)投資し、当社を通してアフリカ消費者向けの商品販売へ乗り出そうとしている。このように、資源調達ではなく、アフリカ市場としてのビジネスの可能性が十分伺える。その背景には、アフリカに潜む巨大な消費購買力と改善され続けるビジネス環境の存在がある。

主にサブサハラアフリカの援助や政策立案を行う英国国際開発省が関わるエチオピアのセメント工場

主にサブサハラアフリカの援助や政策立案を行う英国国際開発省が関わるエチオピアのセメント工場

アフリカに潜む巨大な消費購買力

 新興国で中間所得層が増加していることは良く耳にするが、具体的にどの程度の市場規模なのだろうか。2011年にアフリカ開発銀行が発表した調査によると、2010年時点で既にアフリカの人口の約34%(約3.5億人)が一日平均約200~2,000円の可処分所得を持つ中間所得層に属している。そのうち、14%は一日平均約1,000~2,000円の可処分所得を持つ上流中間所得層(アッパーミドルクラス)である。金額にすると、2008年時点で6,800億円の年間消費と推定されている。このまま伸び続けると、2030年にはアフリカ消費市場は2.2兆円(世界の消費市場の3%)になると推定される。この巨大消費市場を取り込もうと、現地で原料調達・加工・販売を行うバリューチェーンの構築に乗り出す多国籍企業が増え始めている。また、現地市場・顧客に即したビジネスモデルを展開して成功している現地企業も多く存在する。

(図1)アフリカの中間所得層の増加<br />
(出典:The Middle of the Pyramid (アフリカ開発銀行 2011))

(図1)アフリカの中間所得層の増加
(出典:The Middle of the Pyramid (アフリカ開発銀行 2011))

改善され続けるビジネス環境

 アフリカでのビジネス展開を後押ししているもう一つの要因として、ビジネス環境の改善があげられる。世界銀行が毎年世界189ヵ国を対象に行っているビジネス環境調査Doing Business Report 2016では、アフリカ5ヵ国(ルワンダ(62位)、ボツワナ(72位)、南アフリカ(73位)、チュニジア(74位)、モロッコ(75位))、がトップ80ヵ国入りしており、中国(84位)、インドネシア(109位)、インド(130位)等より順位が高い。

 また、世界銀行は2014年から2015年にかけて行われたビジネス環境の改善改革の30%は、サブサハラ(※)諸国によるものであったと発表している。サブサハラの各国は平均して1.5件の規制改革を行い、特に東アフリカのウガンダとケニア、及び、西アフリカのセネガルとベナンは全世界でも規制改革が多かった上位10ヵ国にランクインしている。具体的には、企業登録の手順の簡素化、電力へのアクセス向上、及び現地での資金調達の拡充に向けた規制の改革などがみられた。
※サハラ砂漠以南のアフリカ地域

モロッコの年間消費電力の約10%を賄うハイブリッド発電所「Ain Beni Mathar」の施工や運用・保守契約を結ぶスペインの総合エンジニアリング企業によるソーラーパネル洗浄の様子

モロッコの年間消費電力の約10%を賄うハイブリッド発電所「Ain Beni Mathar」の施工や運用・保守契約を結ぶスペインの総合エンジニアリング企業によるソーラーパネル洗浄の様子

アフリカへ進出する日系企業も増加

 日系企業は、製造業・非製造業ともにアフリカへの進出が2011年以降加速している。JETROが行った2015年度在アフリカ進出日系企業実態調査には248社が回答し、そのうち72社が2011年以降にアフリカへ進出している。国別にみると南アフリカへの進出が最も多く、続いてケニア、モザンビーク、エジプト、モロッコの順に進出企業数が多い。今後の事業展開については、約7割の企業が拡大意欲を示し、特にケニア、モロッコ、エジプトでの売上増加を期待しているようだ。有能な人材を確保することに苦戦していると回答する日系企業が多い中、現地企業の中には低所得層を含め、時間をかけて従業員の潜在力を引き出す工夫をしている事例もみられる。

成功の鍵はインクルーシブ(包括的)なビジネスモデル

 アフリカである程度の規模まで成長し、成功を収めてきた企業をみると、日系・欧米・現地企業に関わらず、どの企業も事業モデルにある工夫をしていることが分かる。それは、自社の繁栄の恩恵が一部高所得層だけに及ぶような事業モデルではなく、低所得者層も巻き込み、ともに持続的に成長していく「インクルーシブ(包括的)」な事業モデルを構築してきたということである。
 

(図2)インクルーシブなビジネスモデル-低所得者層の4つの参画方法<br />
(出典:Dalberg analysis)

(図2)インクルーシブなビジネスモデル-低所得者層の4つの参画方法
(出典:Dalberg analysis)

ケニアで2番目に大きいマーケットで豆を売る農家

ケニアで2番目に大きいマーケットで豆を売る農家

 例えば、ビール会社が小規模農家から原料となる大麦を調達し、工場でビールを製造する従業員を周辺コミュニティから雇い、現地の人々が好む味のビールを低価格で販売していく、といった具合だ。
 
 前節で述べたように中間層が増え、高い購買力を持つ顧客層が増え続けていることは事実だが、アフリカで事業を拡大するためには、低所得層を事業モデルに上手に組み込む必要がある。消費財販売であれば、彼らを無視していては市場はすぐに頭打ちになり、製造業や流通業であれば、労働力となる彼らの教育は、事業を効率的に運営するための要となる。つまり、アフリカでの成功を目指す企業にとっては、インクルーシブなビジネスは選択肢ではなく、生き残るための必要条件なのである。

出典

・Mail & Guardian Africa
http://mgafrica.com/article/2015-06-03-general-electric-seeks-to-double-africa-revenue-to-10-billion-in-5-years-eyes-nigeria-and-ethiopia

・Africa Capital Digest
http://africacapitaldigest.com/axa-backs-africa-internet-group-with-84mln/

・Africa's middle class: The Middle of the Pyramid (アフリカ開発銀行 2011)
http://www.afdb.org/fileadmin/uploads/afdb/Documents/Publications/The%20Middle%20of%20the%20Pyramid_The%20Middle%20of%20the%20Pyramid.pdf

・世界銀行 「ビジネス環境の現状2016:質と効率の評価(Doing Business 2016: Measuring Quality and Efficiency)」
http://www.doingbusiness.org/

・JETRO 在アフリカ進出日系企業実態調査(2015年度調査)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2016/258c29ac863240f1/research_afjp2015.pdf

古山 修子

ダルバーグ・ナイロビ事務所(パートナー)

アンダーセン、IFC等を経て2010年より現職。日系・欧米系企業のアフリカ市場進出、アフリカ現地企業の戦略策定、官・民・財団のパートナーシップ形成支援等を行う。ハーバードケネディ行政大学院卒。

 
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