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プログラム|特別講義 -専門家に聞く-

ケニアにおける環境関連プロジェクトの紹介ーその3

坂田 泉

一般社団法人OSAジャパン(会長)・建築家

プロフィール詳細

ビジネス全般|中東・アフリカ|ケニア|2015年01月15日

現地パートナーとタネをカタチにする

これまで4回に渡って、私たちがケニアで進めている環境関連プロジェクトについてご紹介してきました。最終回となる今回は、2013年2月に持ち込んだ「インフラフリー・ユニット」プロジェクトのタネが現地でどのようにカタチになりつつあるかについて、前回ご紹介したパートナーとの関係からご紹介します。

大学との連携

写真1:JKUATとLIXIL社とのMOU調印式(2014年7月、JKUATにて)

写真1:JKUATとLIXIL社とのMOU調印式(2014年7月、JKUATにて)

ジョモ・ケニヤッタ農工大学(以下、JKUAT)は、1980年代に日本の無償資金協力により設立され、以来20年以上に渡り、日本が文字どおり手塩にかけて育ててきた大学です。日本に留学経験のある教授やスタッフも少なくありません。「農工」大学であるため、工学技術のみならず、農業、園芸、食品、生化学などの広い範囲での接点を持ちうることも企業にとっては魅力です。私たちの「インフラフリー・ユニット」プロジェクトでは、当初からJKUATとの接触を持ち、開発・研究のパートナーとしての可能性について、打ち合わせをしてきました。その窓口になったのは、同大学の ”Institute of Energy and Environmental Technology(エネルギー・環境技術研究所)” (以下、IEET)です。IEETは、エネルギーと環境に関する技術の研究と教育を目的に1990年にJKUAT内に設立されました(注1)。私たちはIEETを通じて、「インフラフリー・ユニット」を構成する三つの機能、すなわち、「(屎尿・生ごみの)コンポスト機能」、「(雨水・生水の)浄水機能」、「(太陽光発電等の)蓄電機能」のうち、「コンポスト機能」についてJKUATとの連携を進めています。具体的には、屎尿や生ごみの堆肥化プロセスについての共同研究です。

企業が大学と連携を組むメリットとして、学術的な面からの「権威づけ」が挙げられます。JKUATとの連携で私たちのよき先達となったのは日清食品の即席麺の開発プロジェクトでした(注2)。同社はJKUATと組むことで、ケニアの人々の嗜好に合い、かつ、栄養価の高い即席麺を目指しました。2013年10月にはJKUATとの合弁会社「JKUAT日清」のブランドで市場に販売を開始しています。JKAUTとの共同開発を前面に出すことで、他の競合商品との差別化、優位性を生み出すことに成功しています。JKUATは、今やケニア一国にとどまらず、東アフリカを代表する総合技術大学なので、食品の栄養面などについての「お墨付き」には一定の効果があると考えられます。

その一方で、注意すべき点も少なくありません。連携に先立ち、企業と大学が「Memorandum of Understanding(合意覚書)」(以下、MOU)を交わすのが通例ですが、これには時間がかかります。企業側も大学側も関連部署のトップが署名をするわけですから、MOU調印にいたる工程には十分、ゆとりを見ておく必要があります。またいうまでもなく、MOUの内容も大切です。知的財産権や費用負担などがよく争点になるところですが、そもそもMOUというのは(契約書とは異なり)、共同でプロジェクトを進めることについての相互の合意を確認することが趣旨です。細かい点についてはMOU締結後の手続きに委ねるようにしないとますます時間がかかってしまうので、注意が必要です(写真1)。

NPOとの連携

写真2:無水トイレ開発モデルの住民への公開(2013年11月、AMTにて)

写真2:無水トイレ開発モデルの住民への公開(2013年11月、AMTにて)

私たちのプロジェクトでは、当初、前回ご紹介した現地の住居系NPO、“Akiba Mashinani Trust”(以下、AMT)との連携を進めました。AMTが進めていたスラム住民のための共同住宅プロジェクトに「インフラフリー・ユニット」の「コンポスト機能」の部分、すなわち水を使わずに屎尿と生ごみを堆肥化する「循環型無水トイレ」(以下、無水トイレ)を試験的に導入することになりました。入居予定の住民グループには、無水トイレを開発モデルの段階から公開し、使い勝手や機能などについて意見を求め、理解を深めてきました(写真2)。

写真3:堆肥についてのガイダンス(2013年7月、AMTにて)

写真3:堆肥についてのガイダンス(2013年7月、AMTにて)

特に、屎尿を堆肥にして農作物に用いることへの抵抗感をなくすために、実際に屎尿から造られた堆肥を見てもらい、環境や衛生への意義だけでなく、化学肥料より安価である点など住民にとって直接的なメリットについても説明してきました(写真3)。2014年6月には、先行して着工された12ユニットの住宅に対してモニタリング用の無水トイレを設置し、住民の移住を待っている状態です(2014年12月現在)。AMTだけに頼るのはリスクが高いという判断から、JKUAT派遣専門家時代から坂田と交流のあるNPOが運営する児童養護施設、“Saidia Furaha(サイディア・フラハ)”(注3)とも連携を進め、無水トイレのモニタリングに協力して頂いています(写真4)。この施設は敷地内に給食用の農作物を栽培する畑を有しており、無水トイレから産まれる堆肥をすぐに利用できる点で理想的な環境といえます(写真5)

写真4:無水トイレのモニタリングへ向けたガイダンス(2014年10月、Saidia Furahaにて)

写真4:無水トイレのモニタリングへ向けたガイダンス(2014年10月、Saidia Furahaにて)

写真5:手前が無水トイレ、奥が堆肥化スペース(2014年10月、Saidia Furahaにて)

写真5:手前が無水トイレ、奥が堆肥化スペース(2014年10月、Saidia Furahaにて)

JICAとの連携

私たちの無水トイレプロジェクトは、JICAによる2013年度「民間技術普及促進事業」プロポーザルに採択されました(注4)。この制度は、企業が途上国における製品の普及を目的として相手国の政府関係者を対象に、日本での研修や現地でのセミナーなどを実施することに対して、JICAが資金的なサポートを行うものです。無水トイレのような製品を普及するためには、これまで述べてきたように、直接的なユーザーへの働きかけが重要なことはいうまでもありませんが、同時に、政府側の関連部門に対して、無水トイレの衛生面や環境面でのメリットをよく理解してもらい、普及のための制度的な基盤を整備してゆくことも不可欠です。私たちは、この制度を活用しつつ、いわば点と面の両方向から製品の普及に必要な環境を準備しています。

むすび

これまでご紹介してきたように、私たちは企業と共に日本から持ち込んだタネを、現地の様々なパートナーとの連携の中で、カタチにしています。そうしたパートナーとの連携構築のために私たちが活用しているのは、私たち自身やJKUATのような、日本とケニアの長年の国際協力が培ってきた資産です。最近のアフリカにおけるビジネスでは、中国や韓国、インドといった新興国との競争が激化しています。そうした中で、アフリカに対して日本が長年培ってきた国際協力の資産を活用することは、他の新興国には望めない強力な武器となる点に、私たちはもっと注目してもよいと思います。

出典

・注1:ジョモ・ケニヤッタ農工大学 Institute of Energy and Environmental Technology(エネルギー・環境技術研究所)
http://www.jkuat.ac.ke/institutes/ieet/

・注2:日清食品 即席麺開発プロジェクト
https://www.nissin.com/jp/about/csr/hyakufukushi/001_kenia/

・注3:Saidia Furaha(サイディア・フラハ)
http://saidiafuraha.sakura.ne.jp/top.html

・注4:JICA 2013年度民間技術普及促進事業
http://www.jica.go.jp/press/2013/20140130_01.html

坂田 泉

一般社団法人OSAジャパン(会長)・建築家

2011年、OSAジャパンを設立。「虹プロジェクト」の名の下、ケニアと日本の間に虹を架けるような仕事を目指している。主な著作に『ムチョラジ!』(求龍堂)などがある

 
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