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プログラム|特別講義 -専門家に聞く-

ケニアにおける環境関連プロジェクトの紹介ーその2

坂田 泉

一般社団法人OSAジャパン(会長)・建築家

プロフィール詳細

ビジネス全般|中東・アフリカ|ケニア|2014年11月27日

タネをどうカタチにするか

今回からは、「日本のタネをケニアでカタチに」という私たちの方法が具体的にどのようなことなのか、「インフラフリー・ユニット」プロジェクトを例に、これまでの現地の動きを追いながら、ご紹介します。

「PSBFの四角形」をつくる

「インフラフリー・ユニット」プロジェクトのケニアにおける動きは、2013年2月の現地渡航から始まりました。この渡航の主な目的は、このプロジェクトの「タネ」を共に育てるのにふさわしい現地パートナーと会い、互いの情報を交換し、将来の可能性を探ることでした。

お会いした具体的なパートナーをご紹介する前に、パートナーを選別する際に描いていた「見取図」について補足しておきます。こうしたパートナーの選別には、私は「PSBFの四角形」ということを念頭に置いています。Pは "Producer(作る人)"、Sは "Seller(売る人)、Bは"Buyer(買う人)、Fは"Finance
(資金)"です。タネからモノにして、さらに事業として成立させるためには、最小限、これらの四要素に関わるパートナーが必要です。下記にご紹介するパートナーのうち、「2)民間企業」は、PやS、すなわち、モノの製造や販売について、私たちにとって有望な技術や顧客、販売網を持っているかという観点で選別しました。また、「3)国際援助機関」は言うまでもなく、Fのパートナー候補です。「1)JICAケニア事務所」は私たちにとって広範な接点を持ちうるパートナーですが、民間企業支援の様々な資金スキームをお持ちなので、Fの有力候補でもあります。「4)学術機関」、「6)ジョモ・ケニヤッタ農工大学」は、広い意味で、Pのパートナーです。さらに、こうした機関に所属する専門家、研究者は、国が規定する規格、標準を製品に対して認証する職務を担当していることが多いので、製品開発の初期段階からコンタクトを取っておくと、製品認証の段階で手続きが迅速に進められるメリットもあります。最後に、Bのパートナー候補としてお会いしたのが、5)でご紹介する住宅関連の現地NPOでした。以下、詳述します。

パートナー選別のためのコンタクト先

1)JICAケニア事務所
この時点では、「インフラフリー・ユニット」プロジェクトについて、JICAから資金面での支援は想定していませんでしたが、後述するように、ジョモ・ケニヤッタ農工大学との協力関係は視野に入れていたため、JICAケニア事務所を訪問し、プロジェクトの概要や今後の進め方について説明しました。

2)民間企業
協力関係が想定できる現地の民間企業の数社ともミーティングを行いました。建設会社 "EPCO Builders Ltd."(注1)は、住宅建設分野の現状、「インフラフリー・ユニット」の運搬や設置費用などについての情報を得るための打ち合わせでした。また、元・駐日ケニア大使、Dennis Awori 氏が役員を務める建材メーカー "Jumbo Chem Kenya Ltd."(注2)とも打ち合わせを行いました。建材についての情報はもちろん、政財界に広いネットワークを有する Awori 氏からプロジェクトについてのアドバイスを得ることも目的でした。

3)国際援助機関
国際的な社会的投資機関である Acumen (注3)のケニア事務所を訪問し、プロジェクトの諸段階における何らかの資金的なサポートの可能性について相談しました。

4)学術機関
プロジェクトをカタチにするには、研究者や専門家の協力も必要です。水環境分野の研究で実績の多いナイロビ大学の David Mungai 教授にお会いし、専門的な立場からの助言やケニアにおける関連分野の専門家についての情報提供など、今後の協力をお願いしました。

写真1:Akiba Mashinani Trust

写真1:Akiba Mashinani Trust

5)現地NPO "Akiba Mashinani Trust"
"Akiba Mashinani Trust(以下、AMT)" (注4)は、都市近郊の低所得層にローコスト住宅を提供するNPOです。AMTの住宅プロジェクトに「インフラフリー・ユニット」を受け入れる可能性があるかを打診するための打ち合わせでした。偶然にも、AMTの顧問建築家が20年前の私のジョモ・ケニヤッタ農工大学時代の同僚だったこともあり、初回から打ち合わせは和気藹々と進み、AMTは「インフラフリー・ユニット」の受け入れを検討することになりました。(写真1・2)

写真2:Akiba Mashinani Trust

写真2:Akiba Mashinani Trust

写真3:ジョモ・ケニヤッタ農工大学

写真3:ジョモ・ケニヤッタ農工大学

6)ジョモ・ケニヤッタ農工大学
ジョモ・ケニヤッタ農工大学(以下、JKUAT)は、「インフラフリー・ユニット」プロジェクトの開発・研究のパートナーとしての可能性について、打ち合わせをしました。JKUATは、1980年代に日本の無償資金協力により設立され、以来20年以上に渡り、日本が文字どおり手塩にかけて育ててきた大学です。日本に留学経験のある教授やスタッフも少なくありません。2008年には、アフリカ連合委員会(AUC)が「汎アフリカ大学(PAU)」構想において、全アフリカ5地域の中、東アフリカ地域の拠点校としてJKUATを位置付けました。2013年6月の横浜における 「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」では、「汎アフリカ大学」支援が採り上げられ、これを受ける形で2014年4月には、JKUATに対して、農業・工学分野の研究者を長期派遣する方針が政府によって決定されました。こうした動きは、欧米諸国や中国に較べ遅れが目立つ日本企業にとってアフリカ進出の足がかりとなる人脈づくりや人材育成を視野に入れたものです。私たちがJKUATをプロジェクトの開発・研究段階での重要なパートナーと見なすのも、こうした背景を踏まえたものです。(写真3・4)

写真4:ジョモ・ケニヤッタ農工大学

写真4:ジョモ・ケニヤッタ農工大学

初回の渡航でお会いしたこれらのパートナー候補のうち、現時点で関係構築を進めているのは、「インフラフリー・ユニット」の受け入れ先となったAMT、開発・研究のパートナーとなったJKUATです。連載最終回となる次回は、この両者との関連から、いろいろな苦労話も含め、これまでの動きをまとめてお伝えします。

注1: EPCO Builders Ltd.
・多くの優れた実績を持つケニアの代表的な土木建設業者
http://www.epcobuildersltd.com/index.html

注2: Jumbo Chem Kenya Ltd.
・建築用断熱材や、輸送・保管用クッション性梱包材を製造しているメーカー
・元・駐日ケニア大使の Dennis Awori 氏が役員を務める
http://www.jumbochem.co.ke/

注3: Acumen
・国際的な社会的投資機関で、社会的貢献の観点から、住宅、保健、衛生、水、エネルギーなどの分野への投資を手掛ける
http://acumen.org/

注4: Akiba Mashinani Trust(AMT)
・都市近郊の低所得層に対して、独自の融資システムを供給し、ローコスト住宅建設など、コミュニテイレベルでの生活向上に取り組んでいるNPO
・代表の Jane Weruは、その功績から、2010年11月、Ashoka財団により"Changemakers" に選ばれている
http://www.changemakers.com/users/jane-weru
・ "Muungano Support Trust(MuST)"(ケニアのスラムにおける住環境や水、衛生の問題と取り組む運動)との連携もしている
http://akibamashinani.org/index.php/about-us

写真1~4: 撮影/井野英隆(augment5)

坂田 泉

一般社団法人OSAジャパン(会長)・建築家

2011年、OSAジャパンを設立。「虹プロジェクト」の名の下、ケニアと日本の間に虹を架けるような仕事を目指している。主な著作に『ムチョラジ!』(求龍堂)などがある

 
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