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プログラム|特別講義 -専門家に聞く-

ケニアにおける環境関連プロジェクトの紹介―その1

坂田 泉

一般社団法人OSAジャパン(会長)・建築家

プロフィール詳細

ビジネス全般|中東・アフリカ|ケニア|2014年09月04日

循環型社会をめざして

前回までご紹介してきたように、一般社団法人OSAジャパンは、日本とケニアに拠点を有するメリットを活かし、「日本のタネをケニアでカタチに」をモットーに、日本企業の持つ優れた技術、プロダクトのタネをケニアでカタチにする仕事を進めています。私たちの手掛ける仕事で一貫しているのは、ケニアにおける循環型社会の実現をめざす環境関連技術に重点を置いていることです。

今回からは、私たちのプロジェクトのうち、環境関連のものとして、日本を代表する総合住設メーカーである株式会社LIXIL(以下、LIXIL)と進めている「インフラ(注1)に依存しないで人間が居住するための設備ユニット(以下、インフラフリー・ユニット)」について、現地での動きを追いながら、ご紹介します。

   注1:
   以下の原稿で「インフラ」と呼ぶのは、人間が居住するための基盤施設全般を意味する
   「インフラストラクチャー」の中でも、上・下水道、ゴミ・屎尿処理、発電・送電など、
   衛生・エネルギー関連の、特に広域ネットワーク型の施設を示しています。

「インフラフリー・ユニット」プロジェクトについて

1)「新しい公共インフラのあり方への提案」としてのインフラフリー・ユニット

図1:インフラフリー・ユニット/コンセプトスケッチ

図1:インフラフリー・ユニット/コンセプトスケッチ

インフラフリー・ユニットのアイディアは、坂田が2011年5月に描いたスケッチ(図1)に始まります。従来、途上国のインフラの整備されていない地域での住居に対し、個別に提供されていた、「(屎尿・生ゴミの)コンポスト機能」、「(雨水・生水の)浄水機能」、「(太陽光発電等の)蓄電機能」をひとつのユニットにまとめ、住居と切り離し単独で製造、設置できるようにした点が特徴です。

従来のネットワーク型インフラ整備は通常、広範囲の大工事になり、工事費、メンテナンス費用も膨大になる上、全体としての完成をみなければ部分的な利用は困難なため、開発効果の現出は滞りがちでした。しかし、本ユニットは自立型なので、規模、工区、工期の点で、柔軟な整備が可能で、分散的に利用を開始でき、開発効果は速やかに期待できます。本ユニットは、新しく開発する住環境のみならず、都市近郊のスラム、山間農村部など、インフラの整っていないエリアの住環境改善のために、既存の環境を大きく変えずに設置することができます。

また、本ユニットは住居そのものとは分離して設置できるので、例えば、公共側が本ユニットのみを先行して整備し、後に民間側が住居のみを建設するという、官民分担による住宅開発が可能です。公共側は予算と時間の許容する範囲で分散型の住宅開発が可能になり、民間側は設備へのコスト負担が不要なので住宅建設コストを抑えることが可能になります。

さらには、これまで、「時間とコスト」を理由に(被災地の復興住宅のように)、画一的な住宅になりがちだった途上国の住宅開発に対し、設備ユニットと分離することで、住居はその土地で入手しやすい素材で、作りやすい方法で建てることができます。その結果、住環境の景観の多様性、土地に固有の伝統的な建設技術の保存、継承も可能となります。

本ユニットの管理運用には、設備機器の整備、コンポスト後の生成物の回収・処理・頒布などの作業が必要ですが、これらを担う人材の職能教育、雇用を創出する効果も期待できます。

2)インフラフリー・ユニットの三つの機能

図2(左):インフラフリー・ユニット/イメージ図<br />
図3(右):インフラフリー・ユニット/コンセプトモデル

図2(左):インフラフリー・ユニット/イメージ図
図3(右):インフラフリー・ユニット/コンセプトモデル

A:コンポスト機能(図2・3 オレンジ色部)
屎尿と生ゴミなどの廃棄物を一体のコンポストユニットによって処理する機能。
コンポスト処理後の生成物は、園芸・農作用堆肥としての利用・販売を検討し、新たな雇用、マイクロビジネスの創出を視野に入れます。


B:浄水機能(図2・3 水色部)
雨水や付近の井戸、川等で入手した生水を濾過、浄化し、生活用水、飲料・調理用水として供給する機能。
浄水機能については、複数の方法を用意し、ユニットが設置される地域の条件(降水量、水源、水質等)とユーザーからの要求に応じて、最適の方法をカスタマイズして提供する方針です。


C:充電機能(図2・3 緑色部)
再生バッテリー(注2)を使ったパワーユニットにより、ソーラーパネル等から充電し、居住部の照明、家電製品へ供給します。再生バッテリーの交換やパワーユニットのメンテナンス等を担う人材のための職能教育、雇用、マイクロビジネスの創出を視野に入れます。

図4:再生バッテリープロジェクト/コンセプトスケッチ

図4:再生バッテリープロジェクト/コンセプトスケッチ

   注2:
   再生バッテリーとは、使用済の鉛バッテリーを特殊な技術処理で、新品とほぼ等しい
   性能まで戻したもの。
   OSAジャパンは、ケニアにおける再生バッテリー事業構想について、「バッテリー
   再生利用プロジェクト」(図4)として、2012年度、JICAによる「BOP (Base
   of the Pyramid)ビジネス連携促進事業」に採択され、2013年4月から環境ライフ
   テクノロジー株式会社をパートナーに現地調査を実施しています。

3)社会における循環の創出

インフラフリー・ユニットから堆肥を生み出し、それをもとに農園を運営し、農作物、園芸品、食品、嗜好品などとして居住者へ戻すという大きなサイクル全体を事業化することを構想しています。
居住者自身が自らの「生命(=LIFE)」を自らの「生活(=LIVING)」の中で養うことができる自立循環型コミュニティ「Green Village」をケニア各地に展開するのが将来の目標です。

私たちのプロジェクトの夢

LIXILのプロジェクトメンバーと(2013年4月、ナイロビにて)

LIXILのプロジェクトメンバーと(2013年4月、ナイロビにて)

OSAジャパンがLIXILと共に、アフリカにおいてインフラに依存しないで人間が居住するためのプロジェクトを進めているのは、単にアフリカにインフラがないからではありません。インフラに依存しないことが、環境にとって、ひいては、すべての「生命」にとって望ましい生き方だと考えるからです。アフリカが先進国のインフラを追うのではなく、アフリカがインフラのない生き方を選び、それを先進国が追い、生命にとって望ましい人間の生き方が地球に広がってゆく。それが私たちのプロジェクトの壮大な夢です。

次回からは、この夢に向かう現地の動きを追います。

坂田 泉

一般社団法人OSAジャパン(会長)・建築家

2011年、OSAジャパンを設立。「虹プロジェクト」の名の下、ケニアと日本の間に虹を架けるような仕事を目指している。主な著作に『ムチョラジ!』(求龍堂)などがある

 
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