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プログラム|特別講義 -専門家に聞く-

中国で苦戦する日本車と消費者の評価

宮田 将士

普千(上海)商務諮詢有限公司(董事総経理)

プロフィール詳細

グローバル生活者|アジア・オセアニア|中国|2014年05月22日

反日暴動後の日本車販売苦戦

衝撃的な反日暴動から約1年半が経ち、日中関係は依然として予断を許さない状況が続くものの、庶民レベルでの反日的な空気は以前に比べると落ちつき始めている。実際、中国人の日本旅行人気は非常に高く、日本のアニメやドラマ、アイドル等コンテンツの多くが若者から支持を集めている。そのような中で日本車も、反日デモで焼き討ちにあった時期に比べれば販売台数は特に2013年後半以降大幅に回復している。とはいえ、中国市場において競合といえるVWを中心とするドイツ車やGM、FORDを代表とするアメリカ車の爆発的な成長と比較すると、日系メーカーであるトヨタ、ホンダ、日産は伸び悩んでいると言ってよい。

2月の販売台数ランキングを見ると、日系車種ではトップの東風日産Sylphyは月に17,000台を販売しているが、それでも上位のVWやGMの3万台、2万台レベルには及ばないのが現状である。

2014年2月中国自動車販売台数ランキング<br />
(出所:中国汽車销售网)<br />
※網掛けは日系車種。

2014年2月中国自動車販売台数ランキング
(出所:中国汽車销售网)
※網掛けは日系車種。

そこで今回は、中国の消費者の視点からみた日本車に対する評価を中心に分析し、日本自動車メーカーの中国市場での伸び悩み、苦戦の原因を明らかにしたいと思う。

日本車=安全ではないという消費者の思い込み

中国消費者の日本車に対する評価、イメージはここ10年ほとんど変わっていない。「燃費が良い」、「内装が精緻」、「細かい部分まで作りこまれている」等が日本車を表すポジティブなキーワードとして中国の自動車系BBSやSNSでも必ず語られる内容である。一方でネガティブな評価、イメージも同様で「安全ではない」、「鉄板が薄い」、「装備のわりに値段が高い」といった内容が長く言われている内容といえる。特に中国消費者の日本車に対する「安全ではない」、「鉄板が薄い」というネガティブな評価と思い込みは深刻で、こうした内容は科学的な根拠が無いにも関わらず、BBSやSNS等では、高速道路で事故を起こし真っ二つになった日本車や、自転車に追突されただけでドアが凹んでしまった日本車等の画像が頻繁にアップされ、それに引き換え鉄板が厚いドイツ車やアメリカ車は日本車よりも安全という文脈で語られることが多い。10年間の思い込み、先入観の蓄積は現在も非常に大きな影響力を持っており、日本車が一部の中国消費者から敬遠される大きな原因となっている。

《フィットと中国者が衝突している写真例(qqbenz.comより)》
12W的日本车还不如几万块的QQ结实! 这还是最新一代日本车。(12万元もする日本車が数万元のQQより弱い!最新モデルの日本車なのに。)

《ドイツ車と日本車の事故写真例 (auto.sun0769.comより)》
德日系车在撞车对比中(事故現場でのドイツ車と日本車比較)

各国自動車の安全性についてのアンケート -安全だと思う車はどこの国の車ですか?-

データ出所:普千(上海) 調査 n=1,000

データ出所:普千(上海) 調査 n=1,000

普千(上海)では、BBS、BLOG、ウェイポー(微博)に各国自動車の安全性に関する質問を発信、回答書き込みを収集し、その中からランダムに1,000件をピックアップして安全性に対する評価をカウントした。欧州車とアメリカ車に関する回答書き込みが各4割弱を占めており、日本車に関する書き込みは1割に満たなかった。

競合の積極的な新車投入による相対的魅力の低下

中国の自動車市場は世界でも最も競争が激しい市場であり、大手メーカーがこぞって新車を世界に先駆けて中国で積極的に投入している。そのような背景下、2012年はVW、GM、FORD、HYUNDAI等中国市場で人気の高いメーカーが更なる新車を相次いで投入した。日本メーカーは新車投入の谷間の時期にあったこともあり、販売台数は相対的に伸び悩んでいた。そこに追い打ちをかけるように反日暴動が発生したことで、販売台数は更に落ち込むことになった。中国の消費者からすると、みるべき新車がないうえに、反日暴動の影響で破壊されるかもしれないリスクがある日本車を買うのは現実的な選択ではないと感じたとしてもおかしくはないと考えられる。

消費者の好みの急激な変化への対応不足

従来、中国の消費者は大排気量エンジン、大きな車体、セダンを好むと言われてきたが、この数年で中国消費者の好みも多様化し、小排気量、コンパクト、ハッチバック、SUV等も人気を集めるようになってきた。直噴ターボ技術によるエンジン排気量のダウンサイジングの先陣を切ったのはドイツのVWであり、ハッチバックの車種を積極投入したのはGMであった。またSUVカテゴリーでも、勢いがあるのはVWのTiguanやFordのKUGAであり、日系メーカーはこうした変化にスピーディーに対応することができていない。

出所:新浪(中国最大のポータルサイト)カテゴリー別注目車種ランキング【2014年4月2日時点】<br />
網掛けは日系車、各カテゴリーとも日系のランクインは1車種のみ

出所:新浪(中国最大のポータルサイト)カテゴリー別注目車種ランキング【2014年4月2日時点】
網掛けは日系車、各カテゴリーとも日系のランクインは1車種のみ

中国市場における日系自動車メーカーの今後の見通し

以上、日系自動車メーカーの中国市場における苦戦の要因を3点あげて分析したが、そのうち2点目と3点目の問題は、2014年に入って解消の兆しが見えつつある。2014年は日系メーカーも新車を続々と投入しており、中国消費者の好みに対応する形でファミリーカー、コンパクトカー、SUV、王道のセダンとバラエティーに富む製品ラインナップが登場し始めたことで販売台数を急激に回復している。一方、1点目にあげた「日本車=安全ではない」というイメージについては依然として多くの口コミメディア等でみられる評判、イメージであり、このような根拠のないイメージが長期にわたって、日本車購入を阻害する要因となっている点は、鉄板の厚さが安全性をはかる絶対的な基準ではないことや、日本車のすぐれた安全性をアピールする等して、時間がかかるとしても今後解消していくべき問題であると考えられる。

出典

・中国汽車销售网
http://www.qichexl.com/a/xiaoliangpaixing/2014/0311/810.html

・新浪 (小型車注目度ランキング)
http://data.auto.sina.com.cn/a0/

・新浪 (SUV注目度ランキング)
http://data.auto.sina.com.cn/suv/

宮田 将士

普千(上海)商務諮詢有限公司(董事総経理)

中国留学を経て2001年に普千(上海)商務諮詢有限公司を設立。メディアやインターネットの記事、口コミ情報に関するデータ分析、レポート作成、マーケティング・PR戦略立案等のコンサルティングサービスを提供。

 
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